第34回松戸市外国人日本語スピーチコンテスト」開催

東葛まいにち

(集合写真提供=松戸市国際交流協会)

2026年2月28日㈯13時から松戸市民劇場にて、「第34回松戸市外国人日本語スピーチコンテスト」が開催された。

 外国人住民が抱く日本への想いを共有し、市民との相互理解や友好親善を深めることを目的とした本コンテスト(主催=松戸市国際交流協会(MIEA))には、留学などで日本に暮らすフィリピン、ミャンマー、中国など6か国出身の14人が出場。日本に来て感じたこと、日々の考えや思いを日本語でスピーチした。

入賞者(上位5名)には表彰状とトロフィー、副賞が贈られた。

特別賞
ミカイル・キンドルク 演題『言語の力』

優秀賞
ファム ティ フェ 演題『私の考え』

ロータリークラブ賞
ライ サミシャ 演題『上手ですね』

松戸市国際交流協会理事長賞
ソン ゲイウン 演題『松戸の四季が教えてくれた、「私の季節」を待つこと』

松戸市長賞
アソムブラド ヘレミアス メデリオ 演題『日本のリアルは字幕がない』

松戸市の松戸隆政市長は、
「本当に普段から日本に生まれ育った私たちにはなかなか気づかないようなことを、鋭い視点で非常にユーモアたっぷりに語っていただいたなと思っております。非常に勉強になりました。松戸市としても今、2万7千人の外国の方、100カ国以上の方がお住まいになっております。過ごしやすい松戸市を共に作っていきたいなと思いますので、これからも引き続き松戸市に住み、そして楽しんでいただければと思います。」と本コンテストの感想を述べた。

以下松戸市長賞を受賞した演題をご紹介

演題『日本のリアルは字幕がない』アソムブラド ヘレミアス メデリオ

みなさん「字幕」という言葉を知っていますか。そうです。アニメや映画を見る時、画面の下に出てくる文字のことです。登場人物が早口で話していても、知らない単語が出てきても、字幕さえあれば何となく内容がわかりますね。「聞き取れなくても大丈夫!」そう思わせてくれるのが字幕です。しかし、外国人にとって字幕はただの文字ではありません。 理解するための道しるべ、安心して物語の世界に入るためのかぎです。でも、少し考えてください。もし、その字幕がなかったらどうしますか。

私は長い間アニメを見ていて、字幕のおかげでいろんな言葉が拾えました。その結果、 私は少し調子に乗ってしまって、次は日本での生活に挑戦することにしようと思いました。 そして、新聞奨学生として日本へ来るチャンスを得て、おととしの4月に日本へやってきました。

私はフィリピンで6か月間、日本語を勉強していたのですが、ほとんどアニメで習いました。アニメを見ながら「日本語って意外と簡単じゃん」と思っていました。
日本に来たばかりの時、当時の私は自信であふれていて、「ぼくは子供のころからアニメをずっと見ているから日本人と話せるぞ! あいさつのせりふもちゃんと用意できたし簡単だ。」と思い込んでしまいました。

ある日、店で会計をしていると店員さんに「現金ですか。」と聞かれました。私は一瞬、 頭の中で考えました。「初対面なのにいきなり元気かどうか聞くんだ。これが日本の文化かな。」そう思った私はにこっと笑って、「元気ですよ。ありがとうございます。」と答えました。その後、よくよく考えて私のミスに気づきました。あまりの恥ずかしさに、しばらく 「現金」という言葉が言えなくなってしまいました。それ以来、「お支払方法はどうされますか。」と聞かれるたびに、私は「キャッシュでお願いします。」と答えるようになりました。字幕があれば内容も気持ちも全部理解できる気がしました。しかし、日本に来てから気づきました。日本のリアルは字幕がないということに。

字幕がない世界は思ったより静かで、厳しいものでした。自分の気持ちをうまく伝えられず、相手の言葉のニュアンスもつかめません。そのたびに日本語ができない自分が小さく見えました。しかし、ある日、新聞を配達している時に、お客さんに「いつもありがとうね。」と笑顔で言われました。とても短い一言でしたが、その言葉は字幕よりもはっきりと心に届きました。その瞬間、私は気付きました。字幕がない世界だからこそ、自分の耳で聞いた言葉、自分の口で伝えた言葉に特別な意味が生まれるのだと思っています。今でも日本語について学ぶことはまだたくさんあります。うまく聞き取れないことや、思った通りに伝えられないこともあります。日本の字幕のない世界は分からない言葉ばかりですが、それでも一日一日、少しずつ分かるようになろうと頑張っています。

ふり返ってみると、私が日本で出会ってきた「分からなかった瞬間」はすべて失敗ではありませんでした。聞き返せなかったこと、勘違いしてしまったこと、恥ずかしくなったこと。その一つ一つが私にとっては日本の生活を学ぶ大切な経験でした。でも、字幕のない現実では、立ち止まって考えたり、相手の表情を見たり、自分から行動する必要があります。その分、不安もありますがその不安の中に人とつながるきっかけや新しい発見があることも少しづつ分かってきました。

日本のリアルは字幕がありません。だからこそ失敗をして、笑われて、時々泣いて、それでも前に進む価値があります。これからも字幕のない世界に挑戦し続けたいと思っています。


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