
うしろから撮るな 俳優織本順吉の人生 7月5日㈯~公開

織本順吉、脇役一筋70年。今回は、地味ながら情熱あふれる演技で人々を魅了しつづけた、ひとりの俳優の最晩年に密着したドキュメンタリー作品をご紹介します。
『うしろから撮るな 俳優織本順吉の人生』は、2015年の夏から織本順吉に密着した4年間の記録です。すでに認知症の兆候が出始めていた織本ですが、その症状は4年間で徐々に進行し、撮影ではミスを連発。織本の役者人生の前に「老い」の壁が立ちはだかります。
本作のメガホンをとったのは、織本の実の娘・中村結美。自らホームビデオをまわし、織本の素顔を明らかにしようとします。中村が本作を手がけた動機は、2000を超える映画・テレビドラマに出演した一方、家庭を顧みることがなかった父への復讐心。そのため本作は、一俳優の老いとの闘いだけでなく、父と娘の壮絶な闘いの記録でもあります。
「セリフ間違えてたやんか」「もうお仕事は来ないかもしれないのにどうして生きていくん?」と容赦ない言葉を放つ娘に、激昂して当たり散らす父。はたして、自らの業をさらけ出しているのは、撮られる父か、撮り続ける娘か。カメラを挟んで繰り広げられる父と娘の魂の対話に、ぜひ耳を傾けてみてください。
(キネマ旬報シアター 長谷部)
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