
リレートーク18 髙岡進雅さん

「受けた御恩、次は私が恩返し」
500年続く寺院の僧侶 髙岡進雅(たかおかしんが)さん 成田市
国道51号を成田方面に走り、横道へ入り、少し進むと「成田観音 円応寺(えんのうじ)」が竹林に囲まれ、静かな場所に姿を現した。正式名称は「引地山成就院圓應寺」。奈良県桜井市の長谷寺を総本山とする真言宗豊山派の寺院だ。左手観音堂に安置されているのは十一面観世音菩薩。正面の本堂には真言宗の御本尊である大日如来の像が鎮座する。
真新しい寺務所のドアを開けると、誠実な佇まい、色白の青年僧が出迎えてくれた。同寺住職の髙岡進雅(34)さんだ。
「人口減少、少子高齢化の影響により檀家数は減っていき、墓じまいも進んでいる。お寺の住職になりたいという僧侶はおらず、いつかは廃寺、もしくは他の寺との統廃合は免れない。私で25代目、約500年間大切に守られてきたお寺をここで潰してしまってよいわけはない。お檀家さん以外にも、お寺を必要としている方々の力にもなりたい」と語る。
2011年の「東日本大震災」の年、8月に副住職の父が、11月には住職の祖父が相次いで亡くなり、髙岡さんは、若くして第25世住職を継承。当時はまだ大学生で、大正大学で真言宗の教義を学びつつも「僧侶になるという覚悟もなく、運命に抗うような生活を送っていた」と笑う。急な事実を受け入れられず、どうすればいいのか途方に暮れていた。早世した父からの引継ぎもままならず、母と一緒に名簿を手にお檀家さんの家を、名前を照らし合わせながら一軒一軒確認していった。
「その時に助けてくれたのが、近隣の法類住職、僧侶、お檀家さん、周りの方々だった」と話す。これは長年お寺を守り、信頼を培って来た父と祖父の遺徳でもある。
「次は私が周りの方々への恩返しをする時だ。小さなお寺なので、お寺のためになることが檀家さんや人々のためになると思い、日々の勤めをしている。安心で納得のいく葬儀や供養をすることが使命だ」。
年に1、2回境内でお焚き上げ供養会を巌修しており、それに際して人形や遺品、古い仏具等のご供養を行なっている。「観音さまマルシェ」や落語会も同時開催していて好評だ。マルシェの出店数は14、5店で賑わいを見せている。
「気さくで温かいご対応。葬儀から法要までLINEで簡単にやり取り出来るのはとても良い。お庭も手入れされていて、四季を感じることが出来る。人形供養やマルシェなどの新しいことを取り入れたりして、我々檀家を大切にしてくれる」と檀家さん。
若くて一生懸命、新たな時代の寺の在り方を模索する髙岡さんのファンは檀家にとどまらず多い。
●次回は小幡昇永(おばたしょうえ)さんにバトンを渡します。
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