
お口の病気「口腔がん」ってなに?

DRリポート256
日本大学松戸歯学部口腔外科学講座 教授 石井良昌先生

日本大学松戸歯学部口腔外科学講座 専任講師 山本 泰(ひろし)先生

7月号は「親知らず」、8月号は「過剰歯」について連載させていただきました。9月号は高齢者に多くみられる「口腔がん」についてみてみましょう。
「口内炎がなかなか治らない」、「なにかできものができて出血、痛みがある」、そんな症状が2週間以上続いている時に疑われるのが「口腔がん」です。

口腔がんとは
口腔がんとは顎や口の周囲にできる悪性腫瘍の総称で、日本では全がん患者の1~2%、年間1万2000人程度が罹患します。男女比は3:2と男性に多く、50歳以上の患者が80%を占めています。口腔がんの3/4が舌(47%)と上下歯肉(30%)ですが、他にも頬粘膜、口底、口蓋、唇などにも出来ます。
以前に報道された芸能人の方も舌がんと食道がんがみられましたが、口腔と喉(咽頭)と食道は同一の発生環境にあるとされるため、重複がんは10%を超える割合でみられます。

発生要因や症状
発生の原因は不明ですが、ウイルスや遺伝子の関与も言われています。前がん状態の扁平苔癬(頬粘膜などにみられるレース状の白斑(写真1)では3%、前がん病変の白板症(写真2)では10%ががん化するとされています。
その誘引(危険因子)として喫煙・飲酒が言われており、相乗効果でリスクが高まるほか、口腔環境や栄養状態の関与も示唆されています。初期は無症状のことも多く、白色斑や紅色斑、表面粗造な硬い隆起やくぼみ(潰瘍)として現れます(写真3・4)。進行すると食事時の痛み、出血、飲み込みづらさや話しづらさなどの症状がみられます。


治療法について
治療法は病期(進行度)・部位・全身状態などにより選択されます。早期がんでは機能と形態の温存を考慮しつつ手術による外科切除が第一選択とされることが多いです。
進行した場合でも、放射線療法や化学療法、手術療法を併用した集学的治療が行われます。また近年、口腔がんを含む頭頸部がんに対して光免疫療法といって、がん細胞に特異的に結合する薬剤と光を組み合わせてがんを攻撃する治療法も保険導入されています。
早期発見について
口腔がんを早期発見するに、定期的な口腔管理のために歯科医院へ通院することや各地域で行われている口腔がん検診を受診することは重要です。そして①口内炎が2週間以上治らない、持続的な痛みが続く。②口のなかに腫れやしこりなどできものがある。③口腔内から出血がよくみられる。④自分のお口のなかで、赤い、白い、黒いなどの色の変化がある。それらの気になる症状があれば、早急に歯科医院受診をしてください。
日本の口腔がんの死亡者数が増加しています。最期までお口の機能を失わないためにも早期発見が大切です。口腔がんについて少しでも知っていただく機会となれば幸いです。
■日本大学松戸歯学部付属病院☏047・360・7111(コールセンター)☏047・368・6111(代表)
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