Vol.18 伊藤 美璃(みり)さん(鎌ケ谷市立鎌ケ谷中学校出身)


 小さい頃から走るのが好きで、小学3年生の時から地元の陸上クラブに所属していた伊藤美璃さん。中学入学時に兄の友人から誘われ、陸上部に入部した。

◆第69回東葛駅伝で9区を出走

 中学1年時に2つ上の先輩の付き添いで東葛駅伝に臨みました。その姿がかっこよく見えて、「私もいつか走ってみたい」と思いました。最終学年で選ばれた時はとても嬉しかったです。9区は一直線のコースで前の走者が常に見えて、最初からテンションが上がり、飛ばしてしまいました。終盤はとてもきつかったですが、それを上回るほど楽しかったという気持ちが強く残っています。沿道から「女子だ!」と何度が聞こえてきて、そのたびに自然とスピードが上がりました。各校10人で襷をつなぐのは他の駅伝ではなかなか味わえない襷の重みを感じさせてくれました。東葛駅伝を走る選手はほとんどが男子で、女子が男子とどこまで競えるかを試せるとても貴重な大会です。沿道から多くの声援を受け、道路の真ん中を堂々と走れる特別な経験ができました。

2015年7月 千葉県中学通信大会女子1500m決勝

 中学時代の思い出は、全国大会の1500mと東葛駅伝です。全国大会に進出できたことは、私にとってとても大きな誇りであり、その光景は今でも鮮明に覚えています。攻めの走りはできなかったですが、初めての大舞台を思い切り楽しんで走れました。東葛駅伝は実力次第で男子と一緒に走れるということで、「女子でも頑張れば戦えるんだ」と自信がついた駅伝です。東葛駅伝が中学駅伝の中でいちばん楽しかった大会です。

充実した八千代松陰高校での3年間
 当初は公立校が第一志望で、併願で八千代松陰を受験し合格しました。後に市内の男子が同校に複数人進学するという話を聞き、男女長距離の顧問が同じで、「強い男子と一緒に練習するのも楽しそうだな」と考え始めました。一緒に全国に出場した子たちの大半が成田高校に進学すると聞き、彼女たちには負けたくない、別の道で勝負したい思いもありました。当時、県高校女子駅伝は8位で関東大会に届きそうな位置だったこと、陸上競技と勉強を両立できることもあり最終的に入学することになりました。

2018年5月千葉県高校総体女子3000m決勝


 進学して本当によかったと思える3年間でした。アップやジョグは男子と一緒にでき、高強度練習の日は、男女関係なく声をかけ合い、チーム全体で士気を高め合いました。夏合宿では大橋一博先生が女子チームと一緒に走ることもあり、私たちに寄り添いながら支えてくださりました。

2018年6月関東高校総体女子1500m予選

◆4強にしたい思いから3年連続で駅伝は関東大会出場

 周りから男子との成績を比較される声が耳に入ることがありました。そのたびに胸が苦しくなりましたが、女子駅伝は成田、市立船橋、日体大柏の3強ではなく、八千代松陰を入れた4強にするという目標がありました。その目標を持ち続けたことで、駅伝では3年連続で関東大会に出場できました。トラックでは同級生と一緒に表彰台に上がり、2種目で関東大会に出場できたこと、卒業した今でも何でも話せる仲間がいるのは大きな財産です。

2018年11月関東高校駅伝1区(埼玉県熊谷市)

◆栄養学を学ぶために東洋大へ進学
 東洋大は2016年に全日本大学女子駅伝で初のシード権を獲得しました。2017年に関東大学女子駅伝で初優勝をし、勢いもありました。将来は管理栄養士を目指していたこと、管理栄養士の資格を取得できる学部があるのも魅力でした。希望の学部は推薦枠が埋まり入れませんでしたが、スポーツ栄養について学べる学科があり、陸上を続ける上で必要な知識を身につけようと思い、進学を決意しました。

◆長期の怪我に苦しんだ大学生活
 大学入学後は、思うように走れず焦りを感じ、たくさん距離を踏むことを意識しすぎました。自分の限界に気付いていたのにも関わらず、練習を継続した結果、疲労骨折をしました。その後は、状態が良くなったと思って走り始めては痛みが再発の繰り返しでした。中学、高校では多少痛みがあっても短期間で治り、故障者という枠での練習を経験していない分、復帰までの感覚を取り戻せなかったです。自分の体調を理解して、練習メニューを立てることの難しさを体感しました。そんな中、励ましてくれる同級生や後輩に恵まれ、最後まで競技を続けたことは、大きな自信につながりました。

東洋大時代の仲間たちと。中央が伊藤美璃さん=本人提供

◆心の支えになった練習日誌
 なかなか思うような結果が出ない時には、仲間に相談したり、苦しい時は中学や高校時代の練習日誌を何度も見ました。今井洋先生、大塚正人先生からのコメントを読み、「もう一度頑張ってみよう」と自分を奮い立たせてくれる練習日誌は宝物です。また、きつい時ほど笑顔で過ごすことを心がけていました。笑顔でいるだけで気持ちが前向きになり、きつさを忘れたり、不思議なことに身体が軽くなって走れるようになったりもしました。

◆フルマラソン完走に向けてランニングを開始
 大学卒業後は、食品会社に就職し、製造部門を担当しています。肉体労働が多く、上司から「根性あるね!」と声をかけてもらうこともあり、陸上競技を通して得た体力を活かせている喜びを感じます。入社3年目で仕事にも慣れてきました。最近は、休日や早く仕事が上がれた日に時々走り、気分転換ができています。いずれはフルマラソンに挑戦したいので、少しずつ走る距離を伸ばしていきます。

この記事を書いたライター

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