不登校生、親になる。

 ◆里さん(30代)不登校経験者。

 小学校入学当初から、皆で黒板に向かい一斉に同じことをする、答えが分かった人が手を挙げて答えるなどの学校システム自体に違和感を持っていた。時を経て今はシングルで働きながら海ちゃん(小1)を育てている。

 海ちゃんの小学校入学にあたり、相談に来て「学校に行きたくない」と訴えたのは、海ちゃんではなく里さん。「自分が通うわけじゃないのに、学校の敷地に入るだけでドキドキする。説明会の説明も頭に入ってこない…」と言う。

 不登校を経験した人にとって、たとえ親の立場になろうとも学校の存在は脅威のようです。一方の海ちゃんは入学してすぐ学校に馴染み、勉強も行事もたのしんで毎日「明日も学校行く!」と通っていました。しかし、最近になって海ちゃんが朝「学校行きたくない」と言い出すようになりました。

『海は私と違うタイプだから大丈夫』と安心していた里さんはうろたえます。理由を聞いても泣いてばかりで釈然としません。『行きたくないと言ってるんだから休ませた方がいいに決まってる』。でも仕事が軌道に乗り始め、任せられる仕事も増えてきた矢先です。まだ一人で留守番させることはできず、かといって生活のためには働きに出ないとなりません。数日は仕事を休み一緒に過ごすようにしたものの、焦りが募ります。

 翌週。海ちゃんは泣くことはなくなり、朝、教室まで付き添うことでなんとか通うようになりました。それでも教室に入るとき、ドアの前で立ちすくむ海ちゃんを見ると、胸が張り裂けるような思いが里さんを襲います。

「前に、他の子が『行きたくない』って泣いていて、スーツ姿のお母さんが『行きなさい!』って怒鳴ってるのを見て、そんな無理させちゃいけないのにって思ってた。今、私は怒鳴ってはいないけど、同じことをしている…」と自分を責めます。

 学校に行きたくない気持ちが他の親よりも分かるだけに、辛さも増します。専業主婦や三世代同居が少なくなった今の時代、特にシングル家庭における不登校は死活問題につながります。社会全体で考えたい問題です。

この記事を書いたライター

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