
バード ここから羽ばたく 10月4日㈯~17日㈮公開

世界の片隅で生きる1人の少女に訪れた魔法のような4日間を描く、全く新しい青春映画。イギリスの名匠アンドレア・アーノルドの映画が、満を持して日本初公開となった。
12才の少女ベイリーは、シングルファーザーの父バグと暮らしている。やり場のない孤独を、スマホで鳥や虫を撮影して紛らわす毎日。そんなある日、どこからか“バード”と名乗る謎の男が現れる。
彼のぎこちない振る舞いの中にピュアな何かを感じたベイリーは、「両親を探している」というバードの手伝いをはじめる。摩訶不思議な鳥のような男との出会いによって、ベイリーのどんづまりの日常は色づいていく。
激しく揺れる手持ちカメラは、ブラーやコールドプレイのUKロックのアンセム的名曲にのせて、思春期の少女の焦燥を映し出す。そして映画には鳥、馬、蛙、蛾など生き物がたくさん登場する。郊外の下町でも動植物との豊かな交流が、こんなにも溢れていることに驚かされるだろう。
彼女の生きる重たく苦しい時間を描く社会的リアリズムは、動植物の想像力を宿して、希望を描くファンタジーへと変貌していく。これはどうしようもない現実の生活を肯定し、その先へはばたく力を与えてくれる映画だ。
キネマ旬報シアター 鈴木結太
この記事を書いたライター
