散華下図《書の力 第60回》最終回
土田 麦僊 (つちだばくせん)<1887-1936>
TSUCHIDA Bakusen
大正3年 (1914)
六曲半双屏風 大本山成田山新勝寺蔵
新潟県の佐渡に生まれた麦僊(ばくせん)は、16歳で京都へ上り智積院に入った後、17歳で竹内栖鳳に入門し、画道を志しました。伝統的な日本画に西洋絵画の写実性を融合させ、独自の様式を確立したことで知られています。
本図は、第8回文展に出品された代表作「散華(さんげ)」(大阪中之島美術館蔵)のための下図です。仏様を供養する散華を描いたこの下図は、中央で蓮華をまく二人の菩薩の躍動的なたたずまいが印象的です。この図のために麦僊は新聞広告でヌードモデルを募集しました。これは大きな話題となります。
下図ならではの醍醐味は、貼り紙による修正の跡をたどれる点にあります。試行錯誤を繰り返しながら丹念に本画へと昇華させていく制作過程が垣間見え、画面には至福の空間が描き出されています。この本図は1月1日から2月14日まで開催される新春特別展「成田山の山水花鳥」にて公開いたします。
さて、本連載も今回で最終回となります。これまで「書の力」に加え、成田山ならではの絵画もご紹介してまいりました。一つひとつの作品や場所に宿る物語が、皆様にとって新たな発見や心の糧となっていれば幸いです。全60回、長きにわたりお読みいただき、心より感謝申し上げます。(学芸員・谷本真里)
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