吉法師の読書案内⑩『雷電為右衛門を描く二つの作品』

いのちの糧・良書吉日

『雷電』梶よう子著(角川書店刊)
『雷電本紀』飯嶋和一著(小学館文庫)

今回は江戸時代の相撲力士、信州出身の剛力、雷電為右衛門を描く二つの作品を取り上げる。

江戸時代、相撲は人気の興行だった。庶民だけでなく、大名も有望な力士を取り立て、帯刀を許し、わずかな俸禄を与えていた。雷電は雲州松江藩(島根県)のお抱えで、梶よう子著『雷電』はこの藩の江戸留守居役見習、石積多平太という若い武士が主人公だ。藩の抱え力士の世話は留守居役の骨折りだが、活躍は手柄として跳ね返ってくる。松江藩は相撲藩という異名があるほど、藩主が相撲好きであった。

雷電の勝率は全取組の内、9割6分以上という猛者(もさ)を誇ったが、この内、同じ力士に2敗している。その力士というのが花頂山五郎吉。小説はこの花頂山との取組みが一つのテーマであり、なぜ天下無双の力士が横綱になれなかったのか・・・。

当時、相撲の最高位は大関で横綱という地位はなかった。横綱は行司や相撲作法の制定を役目とする相撲の家元ともいえる吉田司家(よしだつかさけ)が許可を与えていたもので、谷風と小野川の二人にこの許可を与えていた。

飯嶋和一著『雷電本紀』は日本橋高砂町の鉄物商い鍵屋助五郎と雷電の交流を中心に二十歳までを蒼龍編、谷風に稽古をつけてもらい、松江藩に召し抱えられる朱雀編、雷電二十歳後半から引退までの最盛期を白虎編、晩年の鐘楼の再建事件を玄武編として構成。この鐘楼事件は、自分より早く世を去った相撲人を供養するために助五郎に相談するのだが、幕府のご禁制に触れ、雷電、助五郎の行く末を悲しいものにするのである。

■吉法師
漁師町の生まれ。青春は陸上競技に明け暮れ、その後、トライアスロンにも挑戦。中学生時代、国語教師への憧れから、読書に目覚め、今や本の虫。

この記事を書いたライター

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