おすすめシネマ『旅立ちのラストダンス』

6月27日(土)~7月10日(金)

 今回は、「家族」「伝統儀式」「死生観」という普遍的なテーマを真っ向から描いた香港映画をご紹介します。『旅立ちのラストダンス』は、香港の若者からシニア層まで幅広い世代の共感を呼んだヒューマンドラマです。涙する観客が続出した本作は、香港の歴代興行収入の第一位を塗り替えました。

 ウエディングプランナーのトウサンは、コロナ禍で多額の負債を抱え、葬儀業者への転身を余儀なくされます。しかし、結婚式と葬式は大きく違い、さまざまな困難に直面します。最大の難関は、ともに葬儀を取り仕切る「葬儀道士」であるマン師匠に認められること。利益の追求が第一のトウサンと伝統を重んじるマン師匠は、考え方の違いから絶えず衝突し、二人の関係は最悪に。それでもマン師匠一家と関わるうちにトウサンのわだかまりは徐々に消え、葬儀で執り行う「破地獄」の真の意味に気づいていきます。

 「破地獄」とは、葬儀で道士が舞い、死者を地獄から救う香港伝統の儀式のこと。香港映画では異例となる実際の葬儀場・遺体安置所でのロケを敢行した本作。圧倒的なリアリティの中で鮮烈に描かれた生と死、そして人と人との絆が、国を超えて私たちの胸に迫ってきます。

キネマ旬報シアター 長谷部

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