「歯科診療所」、「歯科医師」って多いの?少ないの?

DRリポート258回

日本大学松戸歯学部 歯科医療管理学講座  教授 小椋正之先生

2000年頃、「歯科診療所の数はコンビニエンスストアよりも多い」というフレーズが、雑誌等のマスコミを通じて広まりました。この言葉は、歯科医師の過剰や過当競争、患者数の頭打ち等といった状況を端的に表す比喩として、現在でもしばしば見聞きします。実際に直近のデータをみると、歯科診療所は約6万6千施設、コンビニエンスストアは約5万5千店舗であり、確かに歯科診療所の方が多い状況にあります。ただし、この「約6万6千施設」という数が多いのか少ないのかについては、それぞれの立場等によって見方が異なるでしょう。

歯科診療所のコンビニ以外との比較

歯科診療所やコンビニエンスストアだけでなく、他の施設も比較してみると、医科の診療所数(内科・外科等の全ての診療科を含む)は約10万5千施設です。一方で、理容院(いわゆる床屋)は約11万施設、美容院は約27万4千施設と合計すると約38万5千施設にもなります。
理容院は理容師志望者の減少により年々減少傾向にありますが、それでもなお約11万施設と、歯科診療所(約6万6千)のおよそ2倍の数を保っています。さらに、文化庁の報告によれば、小さな祠等を除いた神社仏閣等の宗教法人は、仏教系だけで約7万6千法人、宗教法人全体では約18万法人にのぼります。

歯科医師数 医師数との比較

 次に、歯科診療所数ではなく歯科医師数を見てみましょう。2年ごとに公表される「医師・歯科医師・薬剤師統計(令和4年)」によると、医療施設に勤務する医師数は約32万7千人、歯科医師数は約10万2千人です。診療科別でみると、多い順に、内科(11万7千968人)注1、歯科(8万7千867人)、外科(2万6千338人)注2、整形外科(2万2千506人)、小児科(1万7千781人)等となっており、歯科は内科に次いで2番目に多い診療科となっています(表1)。

需要と供給のバランス そして適正数

もちろん、歯科診療所数や歯科医師数を、医科診療所や理容院・美容院、宗教法人等と単純に比較することには限界があります。施設の目的や社会的機能が異なるため、単純な「多い・少ない」で論じることには慎重さが求められます。
今回の比較は、あくまで数的な現状を示すファクトの提示にとどまるものです。また、全国的な総数だけを見ても実態はつかめません。地域による偏在や、需要と供給のバランス等、より詳細な分析が必要です。国民や地域の住民に適切な歯科保健医療を提供するためには、どのくらいの歯科医師数が必要なのでしょうか。
厚生労働省では現在、「歯科医療提供体制等に関する検討会」の下に「歯科医師の適切な配置等に関するワーキンググループ」を設置し、歯科医師の適正数についての検討を進めています。
注1:内科には、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、腎臓内科、脳神経内科、血液内科を含む。
注2:外科には、呼吸器外科、心臓血管外科、乳腺外科、気管食道外科、消化器外科を含む。

日本大学松戸歯学部付属病院☏047・360・7111(コールセンター)☏047・368・6111(代表)

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