歯の形に潜む病気のサイン①気づきにくい歯の形の落とし穴 ― 盲孔と中心結節 ―

DRリポート262

日本大学松戸歯学部  解剖学講座 教授 塩崎 一成先生

私たちは普段、むし歯や歯周病の原因を「歯磨き不足」や「甘い物の摂り過ぎ」と考えがちです。もちろんそれらは重要な要因ですが、実は歯の形そのものが病気の原因になることもあります。

歯の形には個人差があり、その特徴によっては汚れがたまりやすかったり、歯髄(歯痛を感じる神経や血管が入っている軟組織)に影響が及びやすかったりすることがあります(図1)。歯科解剖学では、このような特徴を「歯の形態異常」と呼びます。

図1

その代表的なものの一つが「盲孔(もうこう)」です(写真1)。これは歯の表面の一部が内側に入り込むことで、まるで歯の内部にくぼみや袋のような構造ができる状態を示します。特に上顎の前歯の裏側に見られやすい構造で、この部分は歯ブラシが届きにくく、歯の汚れが入り込みやすい場所になります。

写真1歯の裏に潜む小さな穴

外からは小さな穴のように見えても、内部では歯髄に近い部分まで入り込んでいることがあり、比較的若い年齢でもむし歯が進行し、歯髄の炎症を起こすことがあります。見た目には小さな変化でも、歯の内部では大きな問題につながることがあるのです。

写真2 咬み合わせの面にできる小さな突起

もう一つは「中心結節(ちゅうしんけっせつ)」です(写真2)。これは歯のかみ合わせの面の中央に小さな突起のような部分が形成される形態で、主に下顎の小臼歯に見られます。この突起は一見すると小さなこぶのように見えるだけですが、内部には歯髄が入り込んでいることがあります。

日常のかみ合わせや強い咬合力によってこの部分が欠けてしまうと、歯髄が露出し、むし歯がなくても歯髄の炎症や壊死を起こすことがあります。特に若い年代で突然歯の神経の治療が必要になる場合、その背景にこの中心結節が関係していることも少なくありません。

このように、歯の病気は生活習慣だけでなく、歯の形の特徴とも深く関係しています。歯科医院での定期診察では、むし歯の有無だけでなく、歯の溝の深さや形態の特徴も確認しています。

こうした特徴を早期に見つけることで、溝を保護する処置や咬合調整などの予防的対応により、将来のトラブルを防ぐことも可能になります。歯の形には一人ひとりの個性があります。その特徴を知ることが、歯を長く健康に保つ第一歩と言えるでしょう。

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