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10年間を走りきり、今号をもって閉幕

お後がよろしいようで

皆様のおかげをもちまして「放課後の黒板消し」が第100回を迎えました。お正月号の休載や「本棚」と称した読書案内を折折に挟みつつ、2015年9月号から始まりぴったり10年間を走りきった2025年8月号、今号をもって閉幕と相成ります。
ふり返れば第一号では高校野球100周年をテーマに「第97回大会なのはなぜなのか」を書きました。8月に戦争の影を考え、一方で大震災を前に歩みを止めなかった球児たちの力強さについて書きました。今年の夏の甲子園は第107回です。世界的コロナ禍の影響で初の「中止」を経験しましたが、戦後80年の今年まで「中断」なく回を重ねていることの尊さを今改めて感じます。
さて、このコーナーでは〈文学の窓〉と称して文学館の探訪記や文学作品と作家の紹介を書くこともありました。今号では100号にちなみ「百人一首」のお話を少々。
「難波津に 咲くやこの花 冬ごもり いまを春べと 咲くやこの花」この歌は百人一首「ゼロ番」の歌。競技歌留多では「序歌(じょか)」として、多くの場合最初に詠まれます。
この和歌は、百済から日本に渡来し、漢字や儒教を伝えたという王仁(たかひと)が仁徳天皇の即位を祝って詠んだとされ、紀貫之が『古今和歌集』の仮名序(かなじょ)で「歌の父母のようにてぞ手習ふ人の初めにもしける」と紹介するように、習字の始まりでまず習う歌として親しまれました。同じ平安時代の『源氏物語』にも、光源氏が幼い紫の上に求婚した際「まだ難波津の歌さえもちゃんと書けない子どもですから」と祖母が答えています。
では、百番の歌はどうでしょう。「百敷(ももしき)や……」順徳院。しっかり「百」が入っていますね。それでは……嗚呼、話は尽きないものですね。もっと皆さんとお話したいところです。
でも最後は、次の方の準備がよろしく整い、きっと自分よりも面白いですよと席を譲る、この言葉で締めくくりたいと思います。
「お後がよろしいようで」
■K太せんせい
現役教師。教育現場のありのままを伝え、読書案内なども執筆する。
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