季節はこのまま 6月7日㈯~20日㈮公開 

キネマ旬報シアターおススメシネマ

 いまやコロナ禍の生活は、遠い昔の出来事になりつつある。


 そんな今、フランスの映画監督オリヴィエ・アサイヤスは、「あれから5年。あのころの私たち、どうだった?そしていまの、これからの人生はどうだろう。」と映画を通して問いかける。

 2020年、新型コロナウイルスのパンデミックにより世界中で外出が制限された春。


映画監督のポールと弟のエティエンヌは、それぞれが交際をしている女性二人とともに、子どもの頃に暮らした郊外の家に閉じこもって生活する。 懐かしい風景、新たな生活様式への戸惑い、世界から切り離されたような感覚、一緒に住んで初めて知る互いのこと。なにもかもが変わり、すべてが「止まってしまった」時間のなかで、不安を抱えながらもゆっくりと、たしかにそこにある光、愛と人生の新たな側面を発見していく。
 
 急に自炊に凝り出した。またネットで不要なものを買ってしまった。道で友人に会い、うれしくって泣いてしまった。縫い付けられた日々にたしかにあった、忘れてしまいたい時間、覚えておきたい静寂、ふとした優しさに救われる気持ち。


 あの生活を忘れていく今こそ、そこにあった静穏もざわめきも見つめ直してみませんか。


(キネマ旬報シアター 鈴木結太)