オルエットの方へ 9月6日㈯~12日㈮公開

外に出るのが億劫な夏は、映画館で潮風を感じてみませんか。

今回ご紹介する作品は、夏の長期休暇を海や川で楽しむ人々の恋愛や友情、そしてその哀歓を瑞々しく描くヴァカンス映画――その金字塔として知られる『オルエットの方へ』です。

9月の初め、パリで働くジョエルは、友人のカリーンと、親戚のキャロリーヌが持つ海辺の別荘にヴァカンスへ行く。ワッフルを食べたりエビをとったり、女三人、誰にも邪魔されず気ままに過ごしていた。そんなある日、偶然を装いジョエルに好意を寄せる上司ジルベールが現れる。

 退屈しのぎにちょうどよいとジルベールと一緒に過ごす彼女たち。そんな時、浜辺でヨット乗りの青年と出会い、ジョエルは彼に惹かれていくのだが……。

偶然に翻弄され、ひたすら笑ったり、驚いたり、そして軽やかで、どこまでも自由に。そんなヴァカンスの気ままさは、当時の若手フランス映画監督たちが目指した、より自由で新しい映画づくりと響きあって、即興的で開放的な魅力をたたえています。狭いスタジオから飛び出して、街や海辺で自由に撮影された、不確かでありながら、色褪せないひと夏を記録した一本です。

(キネマ旬報シアター 鈴木結太)

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