解体前の寮に感謝の惜別 松戸・聖徳大学「和心寮」で棟下式を開催

東葛まいにち

建物の完成を祝う「上棟式」に対し、長年親しまれた建物との別れを惜しみ、感謝を捧げるのが「棟下式(むねおろしき)」だ。2017年にポラスグループ 中央グリーン開発が開始したこの儀式は、所有者の心に区切りをつける空き家対策の一手法としても活用されている。3月21日、松戸市常盤平にある聖徳大学の女子学生寮「和心寮(わしんりょう)」にて、解体前最後となる同儀式が執り行われた。今回で55回目を数えるこの儀式は、建物が刻んだ歳月に想いを馳せ、思い出を偲ぶ場として広がりを見せている。

棟下式に訪れた卒業生

京成松戸線・五香駅から徒歩10分。閑静な住宅街に位置する同寮は、長年にわたり全国から集まる学生たちの生活拠点となり、数多くの青春の1ページを見守ってきた。  

しかし、建物の老朽化や社会情勢の変化に伴い、その役割を終えることとなった。

松戸神社の神職による清祓式

午前10時から始まった式には、かつてここで共同生活を送った卒業生や地域住民らが参集。建物のガラスに卒業生が感謝の言葉を綴り、その子どもたちがお絵描きを楽しむ「寄せ書き」が行われたほか、松戸神社の神職による清祓(きよはらい)も営まれた。その後、恒例の「餅まき」が始まると、参加者は階上から投げられる餅や菓子を笑顔で受け取っていた。

餅まきも行われた

式が終わると、卒業生や当時ここで働いていた近隣住民らが、役目を終え静まりかえった寮内を感慨深げに巡った。 

「毎朝、通学する寮生を見送っていました。元気がない子がいないか、いつも気にかけていたものです」「ここで寮生の食事を作っていました。このカウンターの向こう側が食堂だったんですよ」と、かつての勤務者たちは当時を懐かしむ。

「当時は相部屋の寮と個室の寮がありました。私は個室を希望していたので、ここを選んだんです」と語るのは、現在は母親となった卒業生。「半年ごとに部屋替えがあり、この階段を使って荷物を運びました」「ここでピアノの練習をしました」などと語りながら寮内を巡る。「ここがママが最初に一人暮らしした部屋だよ」と子どもに語る卒業生。「みんなで協力して学生生活を送っていた頃を思い出します。大切な仲間ができた思い出の場所がなくなってしまうのは寂しい」と思いを溢れさせた。

式典を終え、参加者たちは名残惜しそうに寮を後にした。形ある建物は消えても、刻まれた記憶は参加者一人ひとりの胸に、新たな物語として刻み直された。

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