「歯科衛生士」や「歯科技工士」ってなに?

DRリポート257

日本大学松戸歯学部 歯科医療管理学講座  教授 小椋正之先生

歯科衛生士は、歯科医師と同様に厚生労働大臣の免許による国家資格です。学校または養成所で3年以上の教育を受け、国家試験に合格することで資格を得ることができます。
歯科衛生士の業務は、「予防処置」、「歯科診療の補助」、「歯科保健指導」の大きく3つに分けられます。多くの人がイメージする歯科衛生士の仕事は、歯科診療所などで歯科医師の治療をサポートする「歯科診療の補助」ですが、実際にはこれら3つすべてが法で定められた専門業務です。特に「予防処置」と「歯科診療の補助」は、歯科衛生士にのみ認められた業務独占とされています。

「歯科衛生士」の歴史

歯科衛生士法は、アメリカのデンタル・ハイジニスト(Dental Hygienist)を参考に、昭和23年(1948年)に制定されました。当初は、歯石除去やフッ化物塗布などの「予防処置」が主な業務とされ、保健所勤務を想定していました。
しかし、実際には歯科診療所に勤務する歯科衛生士が多く、「診療の補助」が行えないことに矛盾が生じました。その結果、昭和30年(1955年)の法改正で「歯科診療の補助」が歯科衛生士の業務に追加され、さらに平成元年(1989年)の改正で「歯科保健指導」が加えられました。

古い歴史を持つ「歯科技工士」

歯科技工士も、歯科医師や歯科衛生士と同様に厚生労働大臣の免許による国家資格です。学校または養成所で2年以上の教育を受け、国家試験に合格して資格を取得します。
歯科技工士の業務である歯科技工とは、入れ歯や差し歯などの製作、修理、加工を行うことです。この歯科技工は、歯科医師または歯科技工士のみが行える業務独占となっています。
わが国における歯科技工の起源は、江戸時代の仏師(仏像彫刻家)にまでさかのぼります。彼らは、口の中に手を入れ、手探りで口の中の形を把握して、木製の入れ歯を作っていたといわれています。
近代歯科医療が日本に伝わった当初、歯科医師になることを志す者は歯科医師の仕事の見習いをすることで歯科医師になることができ、歯科医師の仕事の見習いとして行う仕事が歯科技工でした。
しかし、大正2年(1913年)からは歯科医学校卒業者のみが歯科医師になれるように制度が変わり、独立した歯科技工士の養成が必要となりました。その後、養成所の増加を背景に制度の法制化が進み、昭和30年(1955年)に歯科技工法が制定されました。さらに平成6年(1994年)に歯科技工士法と名称が改められ、現在に至っています。

専門職の立場から歯科医療を支える

歯科衛生士と歯科技工士は、ともに国家資格を持ち、歯科医師と連携しながら歯科医療を支える重要な専門職であり、歯科医療の現場に欠かすことのできない存在となっています。歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士は、それぞれの持つ専門性を活用して、それぞれの立場からわが国の人々の口腔の健康を支えています。


日本大学松戸歯学部付属病院☏047・360・7111(コールセンター)☏047・368・6111(代表)

この記事を書いたライター

今月のプレゼント