「直後黒い塊」永守蒼穹(1950-)《書の力 第58回》

ふれあい毎日 書の力

平成23年毎日書道展文部科学大臣賞 紙本墨書 一面 116.0×112.0㎝ 成田山書道美術館蔵

東日本大震災から14年。多くの尊い命が奪われ、さらには住み慣れた故郷を離れて生活せざるを得ない人々も数多く生まれました。

永守蒼穹先生の「直後黒い塊」は、震災の年の毎日書道展文部科学大臣賞受賞作です。大震災の津波の報道から被災地の状況を表現したもので、漢字と仮名とを組み合わせた今日の言葉でこの時代の表現で書き残さなければならないものを形にしました。迫り来る津波をイメージさせる立体感のある書きぶりです。その瞬間でしか書けないもので、震災の記録としても後世に残すべき作品のひとつでしょう。

被災地には今もなお震災の影響を受けながら生活をしている方々がいらっしゃいます。作品中にもあるように「一日も早い復興を願って」います。

この作品は成田山書道美術館で開催中の「書の公募展100年」展に出品しています。12月14日までご覧いただけます。11月22日、23日は入館無料。芸術の秋を楽しんでみませんか。(学芸員 田村彩華)

<釈文>
直後黒い塊。
逃げろ津波だ。誰かが叫ぶ。その直後黒い塊が家を車を人を通りを街をすべてを一瞬にのみこんだ。二〇一一年三月十一日午後二時四十六分、それからの悪夢を私達は忘れない。被災地の一日も早い復興を願って。蒼穹。

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