全てを知る選手ー小西雄大

明らかに際立っていた。

まさに「出色の出来」という表現が相応しかった。

柏レイソルの攻撃と守備を整えるMF小西雄大が際立っている。

シーズンの開幕を告げる風物詩的千葉ダービーマッチである「ちばぎんカップ」と「明治安田Jリーグ百年構想リーグ」開幕戦。この両試合に守備的MFとして出場した小西は、お手本のようなトラップとルックアップから攻撃を構築した。

「調子も良く、体もすごく動けていたので、パワーを出し過ぎたところはありました(笑)。もっとコントロールしなくてはいけません。『強度』などについても90分間しっかりとやれるようにしていきたい反面で、『今できる自分の能力』を含めて、90分間を戦いたかったというのは個人的な反省としてあります」

巧みなボール扱いから試合をコントロールする姿はすでに披露してくれていたが、その精度が上がっている。さらに現在の小西に言及するとなれば、昨今見せている「たくましい守備」について触れなくてはならない。

小西の「属性」を分類するとすれば、それは「ファイターでありクリエイター」と感じていたし、さらに云えば、「歩く構造的優位性」だと思っている。常にコレクティブな戦いを見せ、攻撃力に勝るレイソルへの「対策」として、ぴったりとマークを付けてながら行く手を阻むクラブが増えたことが影響しているのだろう、「ボールを持つ機会」と「ボールを奪い返す機会」の比率は少し変わりつつあるし、前線から果敢にボール奪取を狙う「ハイプレス」は現代サッカーの基本戦術の1つであり、その後の数分のピッチ上でのストーリーを変える決定的なイントロだったりもする。

それ故、MFに求められるのはボール扱い以外にも「連動した守備での貢献とボール奪取・奪ってからのパスの精度」となる。まるで小西のスペックを表すかのような要素が求められている。

「もっと、『頭』を使って相手を上回れたら。それが今の自分の『サッカー感の変化』としてあるんです」と言う小西はさらにこう話した。

「守備面については昨年あまり出せていなかった。前所属の山形(J2)での自分は競り合いの場面が多かった選手でしたし、自信もありましたが、昨年はケガなどもあった。今は状態も良いですし、『予測』を含めて、うまくはまったのかなと思いますが、いい意味でもっと楽をして守備をできたら、『もう1つ2つ上のステージ』へいけると感じている。自分は高い能力に恵まれた選手ではないですから、『奪う感覚』などを忘れずにいたい」

そのような革新的成長を自身に求めているだけでなく、昨年の11月1日の国立競技場と12月6日の三協フロンテア柏スタジアム。この2つのピッチで味わった「あの経験」が今の小西を突き動かしているという。

「昨年は『タイトルを獲得できなかったシーズン』になってしまった。それは『何かが足りなかった』から。チームがポジティヴに感じていることを伸ばしていくためにも、自分が感じていることをチームと擦り合わせていく必要を感じるし、昨シーズンはがみんなについていくのに必死でしたが、今は『どうしたらもっとチームが勝てるのか』に向き合っていきたいし、『タイトル獲得』に貢献していけたらいい。レイソルに足りていないところも、良いところも伸ばしていけるような貢献をしていきたい」

開幕時の躍動にはそのような意志が詰まっていた。それは十分に伝わっていた。そんな小西を見るたびに昨夏にリカルド・ロドリゲス監督が途中加入した小西を表現した言葉が頭をめぐる。

「小西雄大は『私がピッチでやりたいことを全て知っている選手』だ」

また、ある時には。

「私がレイソルのMFたちにまず求めるのは『賢さ』だ」

そう話してくれていた。

試合の中で小西とレベルの高いパス交換や連携を見せる小泉佳穂もこんな話をしてくれた。

「雄大はすごく真面目な選手ですし、左足のキックも素晴らしいのだけど、雄大の1番すごいなと思うところは『サボらないところ』なんですよ。だから、試合の中で気を抜いてやられる瞬間や隙を見せてやられる瞬間というものが、ほぼ限りなくゼロに近い選手だと思っています。自分は浦和時代に岩尾憲選手(徳島)と同じチームでプレーをしてきましたが、雄大にも岩尾選手と似たものを感じているんです。それは主にメンタリティの部分で。ボランチを任される選手に求められるメンタリティを備えた選手ですね。例えるなら、『実に誠実な選手』だと思っているんです」

また、徳島時代に共にプレーをしていた渡井理己も、昨夏の小西加入時にはこんな「小西雄大トリセツ」を与えてくれていた。

「雄大くんの分かりやすい特長としてあるのは、自分を含めた他の選手たちと比べてみても、『左右にボールを振れる』選手。『長いボールが配れる選手』ですね。より大胆な展開をしたい時に効果的なボールを出せるボランチの選手という意味で、真ん中へ細かいパスを付けることが得意なノブ(中川敦瑛)や山ちゃん(山田雄士)とは違った特長を持っていて、タイプ的には、深いところから長いボールを出せる(熊坂)光希とも少し異なるボランチです。明確な『左利き』という武器もあるし、前線の選手たちはより動きやすくなると思いますし、その『動き』や『タイミング』を利用したボールを出すことも得意ですし、また別の選択も選ぶことができる選手なので、攻撃をまた良いものにしてくれると思います。すごいですよ」

この2人にこれだけのことを語らせるボランチ。聞けば聞くほど、小西がボランチを務めている理由が見えてくる。

その中でも「前線が動きやすくなる」、「動きやタイミングを利用」という点には既視感やポジティヴな記憶があるし、おそらくだが、昨年とはボールの動きが変わる。例えるなら、「立体感」が増すように思っている。

ある時、R・ロドリゲス監督から聞いた「全てを知っている選手」発言をそのまま小西に当ててみた。

「そうなんですか(笑)?」

小西はそう笑ってから、こう返した。

「ミーティングや試合で感じたこと、思い返したこと、『こうしていけたらな』と思ったことを監督が言ってくれたりするんです。お互いに感じていることが近いのかなって思うことは多いです。自分に求められていることなど、うまく擦り合わせられている。このサッカーに関する理解度に関しては似通っているなと思うこともあります。これからもそこで手助けできるようにやっていきたい」

だから、すごく興味がある。まだまだ小西について何かを断言するにはあまりにも早いことくらいは分かっているつもり。だが、あの美しいルックアップから捉える景色の先に興味がある。(記事・写真=神宮克典)

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