
伊東純也と関根大輝、それぞれの

7月30日、柏レイソルは日本代表FW伊東純也とDF関根大輝を擁するスタッド・ランスと対戦。試合はMF小屋松知哉とFW瀬川祐輔のゴールでレイソルが勝利(2ー1)。満員御礼の三協フロンテア柏スタジアムは沸いた。
今年1月、まさに今シーズンの始動のタイミングでランスへ移籍した関根にとっては少し早いホームカミングとなったが、この一戦への思いは強かった。当初の予定では「15分間のプレー」という制限があったという。8月9日にリーグ開幕を控えた中での日本ツアーの2戦目。チームマネジメントとしては理解できるが、関根個人としては納得ができていなかった。

ツアー初戦を終えた関根はまずコーチ陣に2日間に渡り直談判。事態の好転を願ったが、開催前日にカレル・ヘラールツ監督の「後半から出場」という許可が下りるまで関根の直談判は続いていたという。
レイソルの攻撃に対峙する赤いユニフォームの関根の姿は新鮮だったが、「随所にらしさを披露」というにはほぼ遠いパフォーマンス。世界中のどのクラブにとっても開幕前のツアーは難しい。伊東との右サイドの連携でチャンスを構築というシーンは作れずだったが、ゴール前へ進入していくなど少なくとも気概は見せた。

さすがに試合後の関根はホッとした表情を見せていた。上背は相変わらずだったが、かなり厚みが出た上半身が印象的だった。
「今日は日立台でプレーすることができて楽しかったです。一緒にプレーしていた仲間たちと、対戦相手ではありましたけど、また一緒にプレーすることができて本当に良かったです。今日はこのツアーの3試合の中で一番楽しみにしていた試合だった。そこでプレーできたのは良かったですけど、不甲斐ない試合をしてしまい申し訳ないと思っていました」

関根のレイソルへの愛着は変わらない。代表チームの取材の際にも細谷真大の状態を逆取材されたこともあるし、同期の大学サッカーリーグ出身選手たちも少しずつステータスを上げている。試合を終えたある選手のスマートフォンの中で喜ぶ姿も見たことがある。関根自身もこのチームにいたかもしれないという関係性もあるのだろう、気にならないわけはない。
「今のレイソルはとても良いサッカーをしていると思いますし、みんな楽しそうにプレーしている。今日も対戦していてすごく嫌でした。今年は強いですし、上位を争ってるので刺激になります。ほとんど毎試合見ているので、『自分も頑張ろう』って思えています。移籍については申し訳ない気持ちもありつつ、でも、『海外でプレーする』っていう夢もあって、強化部もその気持ちを後押ししてくれてランスに来ることができた。またいつか、『日本でプレーする』となったら、『自分はこのクラブでプレーしたい』っていうのは今日もここに帰ってきて改めて感じました。縁とかタイミングもあるので叶うかは分からないですけど、まずはヨーロッパで結果を残して、できるだけ長くヨーロッパでプレーしたいっていう思いもある。その後、日本に帰ってきたら、レイソルでまたプレーしたいなと思います」

半年とちょっと前に、一度去ったこのスタジアムへのホームカミングで関根に生まれた感情は「レイソルへの感謝と、より深い愛着と恩返し」といったところか。次の恩返しは押しも押されぬサムライブルーの一員としての凱旋となるのだろう。
伊東のプレータイムも制限付きだったようだ。そもそも左足の状態をメンテナンスしながらのプレシーズン期間でもあった。
大会前、「できたらスタメン出場をしたい」と話していたという伊東だったが、関根と共に後半から出場。45分の出場の中で決定機もスプリントのシーンもあったが、「練習も昨日くらいから入って、まだコンディションが上がっていない。もうちょい良いプレーを皆さんに見せたかったところが悔しいですね」と話していた。

伊東が三協フロンテア柏スタジアムでプレーしたのは2018シーズン最終節ガンバ大阪戦だった。
「覚えていないです(笑)。いつですか?全然覚えてない。2018年のG大阪戦以来。そうですね、その試合をあまり覚えてないんですけど、まあでも久々にプレーできて楽しかったです。やっぱり、久しぶりに知っているサポーターの歌だったりを聞いてすごい楽しかったなと思いますね」
その試合を最後にベルギーへ旅立ち、日本代表に欠かせないアタッカーとして君臨して、W杯にも出場。自身の価値を知らしめ、さらに高めてみせた。ベルギーへと経つ際には「またいつかレイソルでプレーする時があったら、『背番号7』を付けれたら」と話してくれたが、この件についてはかなり時間が経ってしまっているし、さらにまたある程度の時間と超えるべきハードルを超えてからのストーリーとなるのだが、こればかりは「ネバー・セイ・ネバー」。

来年にはW杯も控えている、伊東にとっては新たなチャプターも控えていそうだ。今の私たちにできることはさらなる飛躍を願うことか。
そんな伊東だが、相変わらず飄々と、時に鋭くプレーをして視線を独占してみせたのだが、こんな気持ちを胸に三協フロンテア柏スタジアムのピッチに立っていたという。
「ヴァンフォーレ甲府でプロ1年目をスタートして、すぐにレイソルへ移籍して。自分にとっては『一番成長できたクラブ』だと思いますし…日本代表にも入りましたしね。その意味で自分が一番成長できたクラブだと思います。今日もレイソルとの対戦だったので、少し無理をして試合に出たのはありますし、しっかり結果を出せれば良かったなと思いますけど、まずは45分間プレーをできたので、そこは良かったなと思います」

真夏の親善試合で感じられたのは伊東と関根の変わらぬ眩しさと現在地と郷愁、時の速さだった。
(写真・文=神宮克典)
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