「松虫寺周辺」悠久の時の流れの中を行く(印西市)

 印旛沼周辺に広がる里山は、これからの季節、緑がいっそう眩しくなる。松虫姫の伝説が残る松虫寺へ車を走らせた。

 印旛沼に架かる船戸大橋を渡ると、すぐに印旛沼公園があった。駐車場に車を入れ、展望台まで歩く。師戸城(もろとじょう)跡が公園として整備されていた。土塁、空濠などが見られ、中世城郭としての様式をよく残している。

 公園を散歩の途中にビオトープについての「お知らせ」に目が留まった。「いろんな生き物がすみかを作るため、あえてこちらで草を刈らず枝や木を積んでいます」という生物保護の視点だ。展望台までは誰にも会わず。眼下に広がる印旛沼を、ただ一人、贅沢に体感した。

 城跡を出て、成田スカイアクセス線「印旛日本医大駅」を目指す。線路を超えるとすぐに松虫寺だ。仁王門前の樹木に圧倒された。境内から出てきた男性と挨拶を交わす。

「早朝に横浜から車で来た。ここの静寂が気に入っている。これから成田へ向かう」と笑顔で話してくれた。見知らぬ人との、こうしたささやかな会話が散歩に彩を添える。

 仁王門から本堂へ歩く。見事な建物で、鐘楼もある。この寺には聖武天皇の皇女にまつわる逸話があるようで、後で調べて、奈良時代から1200年以上の悠久の時の流れを旅することにしよう。

境内の奥には竹林を背に松虫姫神社があった。寺と神社が両方並んでいる。

神社の横に小路があり、家らしきものが見えたので近づいてみると、珈琲を焙煎している。いい香りが鼻先をかすめた。

 カフェから出てきたサイクリング姿の男性と話す。「天気の良い日には毎日サイクリングだ。利根川沿いのサイクリングロードを出て、我孫子市の手賀沼へ。印旛沼周辺に戻り、自宅へ。横浜に住んでいたが、退職後は千葉県に引っ越した」とフランス製の自転車を乗りこなす、パワフルな80歳はかっこいい。

 カフェで休んだあと、横の竹林の小路を歩いた。竹藪の奥から何かに見られている気配を感じた。目を凝らすと怪物のような巨大なブナの木だった。

■『松虫寺』
 本尊は薬師如来。聖武天皇の皇女松虫姫が重い病にかかり、夢のお告げに従い、当地の薬師仏に祈願したところ快復したため、天皇が薬師仏のために堂宇を建て、松虫寺としたという伝説が残る。

◆今回の散歩データ 5㌔、車と徒歩約2時間。
【たっちゃん】千葉県在住。ワインを愛し、テーマに沿って、アートとレコードを楽しむ会を主催する。古書探索と街歩き、料理作りが日課。

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