旅スケッチ 「佐倉市新町周辺」

ふれあい毎日連載

歴史の街で古本と音楽を楽しむ

 コンサートと古本市、どちらにも興味のある私は、情報を聞きつけて佐倉市新町へと向かった。

 京成佐倉駅で下車して先ずは佐倉市立美術館を目指す。坂の途中の古着屋「URON MART」の前で珈琲を入れているムスタバㇽコイネンさんに声をかけた。以前にも美術館内で移動珈琲店を開いていたので覚えていた。

 一緒にいたのはサカモトトモコさん。佐倉城址公園で開催するアート&クラフトフェア・チバ「にわのわ」の実行委員だ。2人とも人を繋ぎ、街を楽しくする人物。帰りにまた寄ることにして、急ぎ坂の上まで歩く。

 美術館の南側の裏新町へ出た。表通りとは違った雰囲気で、過去に七福神巡りで歩いた時に気になっていた小道だ。クランク状の角に市制三十周年記念の鳥のブロンズ像を発見。小さなアートに足が止まる。

 その先の「川魚玉屋」の佇まいに驚く。南へ下る階段の先に何があるのか。森の中へ、下の道へ、民家の中へ、と想像が膨らむ。

 さらに裏新町の小道を進むと、ひときわ大きな木がそびえていた。「大木さんの欅の木陰が涼しいお休み処です」と看板あり。写真を撮っていたら背後から「私が作りました」と声がした。大木さんだった。「ここは江戸時代、同心町といい、牢獄があり、十手を持った侍が住む長屋が並んでいたところ」と説明してくれた。

 美術館によく来ると話すと、家から錦絵を持ってきてくれた。3枚1組で44組所有しているという。鮮やかな色彩に目を見張る。佐倉は裏通りにも歴史が詰まっている。

 美術館でコンサートが始まるので引き返し、ロビーへ入った。パーセルの曲からエルガーの威風堂々まで全8曲、ヴィオラとピアノの演奏を聴いた。生演奏の音の波動は心に響く。この日は約60名の聴衆が熱心に耳を傾けていた。

 美術館を後にして「サクラdeブックス」へ向かった。2階で古本市を開催している。今日はSFファンタジーがテーマ。和室へ入ると3名の男性が自分の店の前に座り、雑談に花を咲かせていた。   
城下町の2階の実に魅力的な部屋の使い方だ。7月のテーマは翻訳本。 それぞれの店名「ひよこ豆」、「もうつぁる堂」、「JUNの別室」とネーミングも面白い。

 2階はカフェで本も販売されている。1階は絵本とシェア型書店、ギャラリーも併設され、6月8日まで「いしみずズコ個展」が開催中。店主のお勧め本は「うさぎのおんがく」。

 「サクラdeブックス」は開店1周年になるが、様々な仕掛けがあり、目が離せないスポットだ。帰り道でアフリカのブリンジという珈琲とシナモン味のスコーンを購入した。

◆今回の散歩データ:2キロ、徒歩約2時間。
【たっちゃん】千葉県在住。ワインを愛し、テーマに沿って、アートとレコードを楽しむ会を主催する。古書探索と街歩き、料理作りが日課。