晩秋から初冬に咲く樹木の花

秋の樹木観察の見どころといえば、やはり葉の色づき(紅葉や黄葉)や、木の実でしょうか。その一方で、少数ながらも晩秋~初冬に花を咲かせる樹種も存在します。そこで今回は、あえて少数派の樹木の花の方をクローズアップします。


この時期の花木の定番は何と言ってもサザンカ。古くから栽培され、童謡にも唄われる身近な存在です。ただ自生は山口県~九州・沖縄の山地に限られます。野生株は花びら5枚の白い花ですが、栽培品種の花はバリエーション豊かで、花びらの色・枚数ともに多様です。


サザンカの仲間にカンツバキ(獅子頭)とタチカンツバキ(勘次郎)があります。カンツバキの枝は横に広がり、背が高くならないことからグランドカバーに、タチカンツバキは枝が上に向かってのびるので街路樹などに使われます。緑茶の原料になるチャもサザンカと同様ツバキ科の樹種で、晩秋に白い花を枝いっぱいに咲かせます。生垣としてもよく使われています。

左上・サザンカ(栽培品種)、右上・カンツバキ、左下・タチカンツバキ、 右下・チャ

サクラの仲間にも、秋から冬に咲く栽培品種があります。その代表的はフユザクラ、ジュウガツザクラ、コブクザクラの3つです。それぞれ花びらの枚数が異なり、フユザクラ(オオシマザクラ×マメザクラ)は5枚、ジュウガツザクラ(マメザクラ×エドヒガン)は10~20枚程度、コブクザクラ(カラミザクラ×コヒガン)は20~50枚程度です。

左上・フユザクラ、右上・ジュウガツザクラ、左下・コブクザクラ、 右下・ビワ

その他、東葛地区ではビワやヤツデ、キヅタ、ハマヒサカキ、ヒイラギなどの花がこの時期の散歩道で見られるかもしれません。なおキヅタの仲間でヨーロッパ原産のセイヨウキヅタは、アイビーやヘデラの名前で栽培されています。そのためセイヨウキヅタ自体はよく見かけますが、日本のキヅタと異なりほとんど開花しません。そのためわたし自身セイヨウキヅタの花はまだ見たことがありません。
ハマヒサカキは海沿いに自生する樹種で、排ガスなどに強いことから、道路の植え込みなどに使われることがあります。花は白いベルのような姿でとても可愛いのですが、見た目とは裏腹にガス漏れのときのような悪臭を放ちます。

左上・ヤツデ、右上・キヅタ、左下・ハマヒサカキ、 右下・ヒイラギ

晩秋~初冬は、日を追うごとに花が少なくなる時期ではあるものの、ぜひ散歩がてらにこういった樹木の花も探してみてくださいね。

この記事を書いたライター

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