「友護は今、何してる?- Episode 3 -」

 たくましくは…なっていそうだ。

 そのように記事を結んで、かれこれ4か月。升掛友護と私によるコラボレーションだ。このようなことは容易に想像できた。ただそれだけのこと。問題はない。

 だが、実際にたくましくは…なっているようだ。

 ある時のジムでの写真には驚いた。愛嬌強めの顔に似つかわしくない腕っぷし。これは画像生成でもなんでもなく、リアルな腕っぷしなのだという。

 「毎日毎日マリンガのジムへ行ってコツコツとやってきたので。相変わらずチームはのんびりとカフェタイムを過ごしてから練習が始まるんですけどね、そこにはもう慣れて(笑)。自分は筋トレをしっかりとやって練習へ…って続けています。たぶん、見たらビックリすると思いますよ。楽しみにしていてください。前は『3キロ増えた』って云ったかもですが、今は7キロくらい増えているんじゃないかな。マリンガは練習寸前に各自100〜140キロのスクワットを『4回x3セット』やるんですけど、それが全然できなかった自分が今は少し錘を増やしてやっています。チームでも、『なあ、ユーゴ。なんか打ったんだろ?ドーピングをしたんだよな?』って驚かれたりしますから(笑)」

 升掛の努力もあるが、そこはブラジル。そもそも「食」が違う。

 「もうそこは絶対にそう。『筋トレ→肉→筋トレ→BBQ→筋トレ→BBQ』って感じなんで、だいぶいい感じです。BBQは昨日もやりましたから。こっちのお肉はすごい美味しいですよ(笑)」

 読者の中には升掛の「近影」となると、「あのロケ」という方々も多かろう。

 「あのロケはマリンガで毎年開催されるイベントに行ったんです。この地域の牛やカウボーイに関するフェスティバルのようなイベントでしたね。いつもは選手が行く感じではないんですけど、マリンガはSNS発信がすごいこともあって、今年は自分が行くことに。あのジェットコースターは怖すぎました。終わってから、『あのジェットコースターって、毎年のように事故が起きるんだよ』って言われて、『なんでそんなのに乗せるんだ!』って(笑)。良い思い出ですね、生きててよかったです!」

 さて、話題をピッチに戻そう。升掛はこの数ヶ月の間でチーム内での評価を上げ、ベンチ入りの回数は徐々に増えてきた。いったい何があったのだろう?

 「練習の強度は相変わらず高くて、危ない(笑)。試合のグラウンドもどこもだいたい良くない。思うようにパスも回らないですしね。自分はそこへの対応に苦労をしていたわけですけど、体を強くしてからは『自分の良さ』を出せるようになりました。チーム内でもだいぶ体が強い選手になってきた感触があります。足もだいぶ速くなって、マックス35kmまで出るようになりました。監督や強化部からも『良くなっている。起用したい』とは言ってもらえてはいる。ただ、『今のチーム状況的に我慢して欲しい』とも言われました」

 12月開幕のブラジル3部リーグは現在最終盤を迎えているのだという。2部昇格を目指して戦うマリンガFCはプレーオフ圏内入りを懸けた重要なスケジュールを残している。簡単に言えば、「もう1つの負けも許されない」というシュチュエーション。

 「マリンガがプレーオフへ進めなければ、この9月でリーグが終わるんです。また、12月にパラナエンセの選手権からスタートして、リーグ戦が始まっていく。今日の時点では残り3試合。だいぶ厳しそうな状況ですけど、なんとか『プレーオフ圏内の8位入りを』と。自分の立場は『メンバーに絡みながら、来年へ向けての準備を』という感じの今ですね。少し前にはサンパウロの『オエスチ』というクラブへの期限付き移籍の話もあったんですが、チームがストップをかけてなくなりました。理由は『良くなっている。残るように』と」

 大会によっては名門アトレチコ・パラナエンセを破るなど順調に船出したはずのマリンガだったが、今はプレーオフに出られるかどうかのスレスレの順位だという。何があったかの理由を聞くと、どの国のリーグでも起こりうることが起きていた。

 「この前、新潟へ加入したFWのモラエスだけでなく、主力選手たちがたくさん引き抜かれていきました。今年のパラナエンセ選手権で活躍した選手もかなりいなくって、ビッグクラブを含む、上のカテゴリーへ行きました。スタメンの半数、センターラインがいなくなって。『いたはずの古賀太陽くんや小泉佳穂選手が来週からいない』みたいな感じ。フラメンゴ行きが決まりかけた選手や出戻りをした選手もいましたけど、主力の移籍が続いて。マリンガというかブラジルのチームは迷いなく選手を売ってしまうので、選手の入れ替わりはすごく多い。そもそも国内にいる選手の数がものすごく多い。基本的に『移籍期限』の概念がない。リーグも多いし、自分と同い年とかそれ以上に若い選手もたくさんいるから、ある意味で『チームの利益』になる可能性が高い選手から起用をしますね。だから、若く才能のある選手を集めたがります、そこははっきりとしています。経営のためにも」

 つまり、同レベルの選手が2人いたのなら、より若く高額の値札がついた選手を起用する。ここはブラジル。新しい選手は次から次へと現れる。この国でプロサッカー選手をするということはこの「循環」の渦の中で生きていくということなのだという。

 「だから、自分にもそれが言えるわけで。まず、12月のパラナエンセ選手権で活躍できれば、『目の前の景色』がガラッと変わることだってある。そんなことを見てきましたし、自分はそんな場所にいるんだなと。そこは魅力的でもあります。1発で『見られ方』がだいぶ変わるので。それがあるから、選手はみんな『自分の結果』、むしろ『ゴール』に執着している。特にアタッカーはゴールしか見ていないくらいですよ。だから、アタッカーはどこもすごい。でも、中盤の後ろやDFなんかは今は日本人選手の方が絶対に上手いですよ。でも、みんな『1発』を狙っているから…それこそ、新潟へ行ったモラエスはそんな感じ。身体能力が高くて、ビックリするような1発を持っているタイプですよ。あと、なんて言うんだろ、サッカーはそこまで上手くはないんですけど、『ボールは友達』なヤツらが多い」

 そんな国、そんな環境で戦ってきた現在の升掛の「見られ方」はどのようなものなのだろう。このブラジル・マリンガ初年度終盤のこの時期に確認をしておきたかった。

 「自分が監督に呼ばれて、試合に出ると、サポーターがドッと沸きますよ(笑)。中には『使え!』と言ってくれるサポーターもいますね。たまにあるんで、サポーターが『誰々を使え』ってアピールして、ほんとにその『誰々』が出てくることが。自分の場合は珍しいから沸きました。あれは気持ちよかった。今のポジションは左右のサイドMFとWB、3バックも4バックもあって、右SBでもスタンバイしています。今季が終わってからまたしっかり考えますけど、自分としては残りたいですね。『他の海外は?』って話になってもマリンガにいたいですかね…もったいない気がするので、せっかくここまでやってきたから」

 監督も代わったが、メンバー入りをするかどうかのところで踏ん張れてはいる。肉体的な成長は進み、強いチャージにも負けない体は手に入れた。ブラジルサッカーがどういうものかも染み込ませた上で「残るように」とまで言わせた。「だったら使ってよ!」という心境だろうが、立ち塞がる問題もある。立ち塞がる?横たわる?…とにかく問題である。

 「やはりまだ『言葉のハンデ』はあるんです。勉強は続けているし、克服できたところもあるし、日常会話はできるようにはなってはいますけど、通訳は相変わらず見つからないしで。『11人のベンチメンバーの中から5人が交代可能』というルールはありますけど、チーム状況と言語の問題もあって、監督も自分を起用しない。コミニュケーションがもっと取れたらな…って毎日のように思うけど、人によって発音もそれぞれだし。すごく難しい。練習から試合へというところに問題がありながらも、今シーズンというものは選手としてかなりプラスになっていますしね。まずはこれをキープしていきたいですね」

 ただ、今はブラジルサッカー界で高く跳ぶために屈んでいる状態に間違いはない。機会が来たら、「1発」に留まらず、何発でもやって欲しい。

 地球の裏側で「1人は退屈」だと感じた時は「レイソル」を積極的に「接種」しているのだというが、我々の間に生まれる、ちょっとしたタイムラグが面白い。また、マリンガでは新しい出会いにも恵まれたという。

 「レイソルはちょっとスゴ過ぎませんか?ハイライトをちゃんと見ています。最近だと三丸(拡)くんの活躍は印象的ですね…やっぱり、『フィジカルは正義』なのかな!いつもミツくんを見てすごく思うんです、『フィジカルは正義なんだ』って(笑)。ミツくんは正義です。東洋大学の湯之前匡央もスゴ過ぎますから!いつかアイツとプレーしたいなって。山之内佑成だってすごいですよね、佑成は面白いし。長南開史もかわいいっすよね。あ!あと、クリスティアーノから連絡来ましたよ。クリスから。『大丈夫か。上手くやれてる?』って。クリスも同じパラナ州にいましたから。プライベートではマリンガで『ガロ・マリンガ』というサッカークラブを経営している三都主アレサンドロさんともお会いして、よくしていただいていますね」

 そんな収録をした週末、マリンガはレトロFCというクラブに1ー0で勝利。決勝ゴールは90+3分だというから首の皮一枚食い下がっている状況。プレーオフ圏内までは2ポイント差。リーグ戦は残りは2試合。升掛も1発を見せておきたいところ。

 帰国が9月なのか、それ以降なのかはまだ不確定だが、オフの行き先はだいたい決まっているのだという。

 「日本へ帰ったら、まずは真家英嵩(FC琉球)に会いに沖縄へ行きたいなと。泊めてくれるか分からないけど(笑)。あと、絶対にレイソルを観に行きたい。きっと、時期的にも『いい時期』じゃないですか?日立台へ行った時、優勝決まらないかなあ。でも、チケットって取れるんですかね?」

 大丈夫だ、君は笑ってりゃなんとかなるから。

 そして、「第4回はぜひとも『日本収録』をしようか?」となっているところで今回は一度終わろう。

この記事を書いたライター

今月のプレゼント