全編千葉が舞台 自主制作短編映画『あの人』

東葛まいにち

画には自分を取り戻す力がある 千葉市

クラウドファンディング協力者と富岡さん(中央)

 今年5月、千葉市生涯学習センターで上映された自主制作短編映画『あの人』。脚本、監督は富岡英里子さん。

映画の舞台は全編「千葉」。心に疲れを抱えた主人公の川中が、古びたテープレコーダーを拾うことから始まる。謎の声に導かれ、千葉の街を巡る中で山中と出会い、不思議な一週間を過ごす。過去と現在、声と風景が交錯する展開が、観客を物語の深部へと引き込む。

ロケ地はすべて千葉市内。映画のコンセプトを「ロケ地はすべて千葉」とした。

出演者はプロの役者に交じり、公募で選ばれた初演技の子役も参加。

子役の香川蔵之助さんと

2026年に開府900年を迎える千葉市。同市の象徴『オオガハス』や『海辺』は、単なる背景ではなく、登場人物の心をも象徴する存在として描かれる。富岡さんの千葉への深い愛情は作品全体に宿る。千葉県の第23回『ベンチャー・カップCHIBA』でSDGsビジネス賞を受賞した。

この物語の背景には、富岡さん自身の「再生」の経験がある。彼女は上映会で、「生きる気力が湧かなかった時期、私を癒やしたのは千葉の風景でした」と率直に語った。

作品には重いテーマも存在するが、千葉の風や海、人々とのふれあいが富岡さん自身に温かさと希望を与えたように、物語の奥底にも温もりと希望の光があるように感じられた。

『あの人』は自主制作の枠を超え、多くの支援と協力によって生まれた。クラウドファンディングで集まった100名超の支援者から111万1000円が集まり、千葉市、民間企業、そしてプロのスタッフや俳優陣の情熱が結集した。

上映会での富岡さん

富岡さんは上映会の日、観客へ心からのメッセージを投げかけた。 「今日、この映画を完成させてくださるのは、今ここにいらっしゃる皆様だと私は思っています。作品を人に届けて見てくれた人の心の中に何かあった時に、その映画というのは完成するのではないかなと思っています」 。

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