
学校に日傘の花が咲く1日があります

授業参観の一日

「陽射し」という、この漢字に、納得するほど、鋭く眩しい太陽の光が降り注ぐ季節がやってきました。この時季、学校に日傘の花が咲く1日があります。そう、授業参観日です。
特に小中学生の時の参観日は思い出に残っている方も多いのではないでしょうか。この日ばかりは一挙手一投足を観察されている児童、生徒たち、自分の子どもの活躍を見逃すまいとする保護者の皆さん、教壇で一身にいつもの倍の視線を集める教員も、教室に集った全ての人が軽い緊張と恥ずかしさと、教室内は非日常の高揚感に包まれます。
決まり文句のように「緊張しなくていいんだぞー」と言っている教員の声が既に上ずっていたり、「○○のお母さんが来てるぞ!」と余計なことを伝え合って緊張させ合ったり、「うちの子落ち着きがなくて…ほらっ、またよそ見してる」などと隣のお母さんとささやき合っていたり。
年頃の生徒の中には「絶対見に来ないでね」と念押しして家を出てくる場合もあることでしょう。しかし、それも含めて本心では「カッコいいところ、がんばっているところを見て欲しい」という気持ちがそこにはあります。
教員も全員を活躍させたいと張り切っているので、いつもなら軽い冗談を挟んでゆっくり進むような場面でもフルスロットルで授業を進めてしまう部分があります。
一方でベテランになると、時には教室に来ている保護者の皆さんに話を振って巻き込んでいくこともあります。まさかあてられると思っていなかった大人の、顔がみるみる赤くなる慌てぶりに、教室は和み、生徒も笑顔になります。
参観の後はクラス懇談会や学年集会が催され、新学期のクラス状況の共有や、夏休みの過ごし方の注意点などを確認して、子どもたちを見守る側のチームワークを高めます。普段より少しだけお洒落をした装いの、華やかな香りを残して参観日の一日は過ぎていきます。
■K太せんせい
現役教師。教育現場のありのままを伝え、読書案内なども執筆する。

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