「当たり前」を支える人に光を――松戸育ちの作家が贈る、身近な社会に気づく絵本

東葛まいにち

松戸市出身の織田敦子さんが、自身初となる絵本『しずかなしごと』(みらいパブリッシング)を7月27日に全国発売する。公衆トイレの清掃員と掃除道具たちを主人公に描いた本作は、「私たちが当たり前に使っている場所は、誰かが毎日静かに支えてくれている」という、日々の暮らしの根底にある大切なつながりを親子で考える一冊だ。

『しずかなしごと』作:織田敦子 絵:はやしともみ

制作のきっかけは、織田さんの娘さんが公園のきれいなトイレを見て発した「これって、だれがやってるの?」という素朴な疑問だった。その一言が、織田さん自身も日々の暮らしについてあらためて考えるきっかけになったという。

「子どもの頃は、公園や公共施設がきれいなのは当たり前だと思っていました。でも、誰かが毎日きれいに手入れをしてくださっていたからこそ、私たちは安心して遊べていたんだと、娘の言葉で初めて気づかされたんです」

織田さんは1歳から22歳まで松戸市五香で暮らしていた。当時の思い出は、今も色鮮やかだ。友達と「やまぶき公園」で段ボールを集めて秘密基地を作ろうとして木から落ちたこと、現在の松飛台市民センターでボードゲームや卓球に熱中したこと。通学路のねぎ畑に積まれた肥料のにおいを避けながら、友達と全力で走り抜けた日々。

大人になってからも、家族と訪れた「21世紀の森と広場」は特別な場所であり続けた。就職活動のエントリーシート用の写真を親に撮ってもらった思い出の地であり、後に音楽業界へ進んだ際には、アーティストのライブツアーの仕事で同所を再訪。「地元に帰ってきたようで本当に嬉しかった」と振り返る。これらすべての懐かしい場所、自由でのびのびとした子ども時代の背景には、常に「静かに維持し続けてくれた大人たちの存在」があった。

絵本の制作にあたり、織田さんは清掃会社への現地取材を行った。そこで最も心を動かされたのは、清掃員たちの仕事に対する真摯な姿勢だったという。暑い日も、凍えるような寒い日も、雨の日も。どんなに汚れていても、誰に見られているわけでもない中で、黙々と、当たり前のように自分の持ち場をきれいにしていく。

「派手ではないけれど、人々の暮らしを静かに支え続けている仕事。その尊い姿から、この作品を『しずかなしごと』と名付けました。絵本ではスポンジやモップ、ほうきといった道具たちが擬人化されて活躍しますが、その根底には現場で働く清掃員さんへの深い敬意を込めています」

織田さんは、本作が「感謝をしましょう」と子どもに教え込むための本ではないと強調する。

「親子で読み進める中で、『この場所も、誰かが支えてくれているんだね』という会話が自然と生まれたら。そして子どもたちが、自分たちの身近な地域や、社会の人とのつながりに自発的に目を向けるきっかけになってくれれば、これほど嬉しいことはありません」

娘のふとした一言から始まった温かな物語は、この夏、全国の親子の元へと届けられる。

「おしごとみーつけた」ページ

絵本の最後の見返しには、親子で身近な仕事を見つけて書き込める「おしごとみーつけた」ページを収録。読んで終わるのではなく、公園や街を歩きながら「この仕事は誰がしているのだろう?」と話し合い、実際に書き込むことができる。

『しずかなしごと』Instagramはこちら

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