大人の歯が萌えてこない!「過剰歯」ってなに?

日本大学松戸歯学部口腔外科学講座 教授 石井良昌先生

日本大学松戸歯学部口腔外科学講座 専任講師 山口桜子先生

7月号は「親知らず」について記載させていただきましたが、8月号はお子さんに多くみられる「過剰歯」についてみてみましょう。

「お子さんの乳歯が抜けたのに大人の歯が生えてこない」、「大人の歯が曲がって生えてきた」、そんな心配をして歯科医院を受診した時に、原因のひとつとしてみつかるのが「過剰歯」です。

過剰歯について

過剰歯とは、本来の歯の本数より多く形成される歯のことです。正常な歯の本数は、乳歯で20本、永久歯で28本(親知らずを含めると32本)ですが、その本数以上に歯ができているものを「過剰歯」と呼びます。

過剰歯は、生えてくるものもありますが、無症状のことが多く、埋まったまま(埋伏過剰歯)、また歯冠部(歯の先頭)が生えてくる方向と逆になっているもの(逆性過剰歯)(写真1)、横を向いているもの(写真2)などさまざまです。家族内でみられることもあり、遺伝の関連もいわれていますが、はっきりとした原因はわかっていません。

過剰歯がみつかる年齢は、永久歯への生えかわり期の6~12歳ごろに見つかりやすいとされていますが、成人になってから歯科医院でレントゲンを撮影して初めて知った方もいらっしゃいます。

発生頻度とできやすい場所

私たちの施設には多くの患者さんが紹介されて来院していますが、発生頻度は1~3%で、男児の方が女児より2~3倍多いとされています。パノラマエックス線やCTなどを撮影して位置、方向、本数などを確認し、診断しています。

過剰歯ができやすい場所(好発部位)は、上の前歯の間(上顎正中部)で、過剰歯全体の8割以上を占めるとされています。その他の場所としては上の奥歯(上顎臼歯部)、下の前歯(下顎前歯部)、下の奥歯(下顎小臼歯部)で、1本だけではなく複数本みられる方も多くいます。

治療方法について

年齢や歯の発育段階に合わせて、永久歯に悪影響があれば抜歯術を行います。手術は局所麻酔で行いますが、深い場所に埋まっている場合、特に小児などで歯科治療に対して不安が強い場合は全身麻酔などで行うこともあります。
過剰歯を抜歯した後は、永久歯の生え方をみて、歯科矯正治療が必要な場合もあります。

乳歯が抜けて半年以上たっても永久歯が生えてこない、前歯の間に大きなすき間がある、前歯の方向がおかしい、またはねじれている、などの症状がある場合は、歯科医院での相談をおすすめします。夏休みにお子様のお口の状態を一度確認しておきましょう。

日本大学松戸歯学部付属病院☏047・360・7111(コールセンター)☏047・368・6111(代表)

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