旅スケッチ 狐が黄金色の球を咥えているのが愉快で、この先の何かを予言しているよう

町の小さな変化を探して「JR西千葉駅周辺」千葉市

 秋晴れの日、街の中に潜む小さな変化を期待してJR西千葉駅周辺へと出かけた。千葉大の最寄り駅だ。

 駅を降りると、松林が続き、すぐ西千葉稲荷大明神の赤い鳥居が現れた。狐が黄金色の球を咥えているのが愉快で、この先の何かを予言しているようだ。

 北へ向かって真っすぐに延びる道を歩き始めると、カフェ、ケーキ屋、古着屋などに出合う。前方に人の行列が見えた。近づくと今日開店のスイーツの店。

 右へ曲がると公園があった。昼の公園は静かだ。紅葉が始まっていた。銀杏の実が階段に落ちている。独特のにおいだ。色鮮やかな落ち葉も目を楽しませてくれる。

 住宅街の中に「tanbi to otome」と書かれたオレンジ色の看板を発見。「お気軽にお入りください」という木片に誘われて中へ入った。古くて面白いものがたくさんあるアンティークショップだ。絵葉書やティーカップ、小さなミシン。それぞれに物語がありそうだ。レジの後ろの壁にビアズリーの絵が何枚もかかっていた。ビアズリーは画集を持っているので、帰ったら見直してみよう。

 「この店は耽美主義に憧れる乙女をイメージして作りました」とレジ前に記されていた。この二つの組み合わせが面白い。

「帰る途中の交差点を左に曲がると、ムーンライト・ブックストアという古書店があります」とタンビトオトメの店長が教えてくれたのはうれしい。

 この店をあとにして、しばらく歩くと、「幸せのれんげ」という定食屋が目に入り、その隣に平積みの本と古本屋という看板が見えた。ここが教えてもらったムーンライト・ブックストアだ!

 中へ入ると、小さなテーブルに本が積まれ、椅子も数個置かれている。カウンターでは常連のお客さんが珈琲を入れている老紳士と話している。かなり長いグリーンのカウンターが気になる。その上の半分以上に本とレコードが並んでいるのだ。

 忙しく本を移動している店員さんに声をかけ、須賀敦子全集第1巻を購入した。月報1にはイタリアのコルシア書店内部の写真が載っていた。須賀さんの著書「コルシア書店の仲間たち」を初めて読んだ時、その熟成された文章に衝撃を受けた。
 店の奥にはアンモナイトがランプの下で輝いていた。その横の古い地球儀も気になる。一日いても飽きない空間だ。

 古書店をあとにして西千葉駅を横切り南口へ向かった。こちらは紅茶専門店やイタリアンやフレンチレストランなどが点在している。

 京成線の線路が見える位置まで歩き、橋の所でひと休みしようとすると、「おさるのCoffee」の看板を見つけた。面白いネーミングだ。こんな所に・・と、地下へ通じる入口が。暖簾を潜ると小さなコーヒー屋があった。横にはジムが併設されていたのは意外だった。夫婦で営むジム&コーヒー屋さんだ。

◆今回の散歩データ:3㌔約3時間。
【たっちゃん】千葉県在住。ワインを愛し、テーマに沿って、アートとレコードを楽しむ会を主催する。古書探索と街歩き、料理作りが日課。

この記事を書いたライター

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