「手刺繍」で豊かに年を重ねる 山田節子さん96歳

ふれあい毎日

習志野市

習志野市谷津に暮らす山田節子さんは、この4月で96歳を迎えた。その手から生み出される「手刺繍」の作品は色彩豊かで驚くほど細やかだ。

山田さんと針の付き合いは半世紀を超える。かつて洋裁学校で基礎を学び、家庭を守りながら、わが子の服を作ることか ら始まった。その確かな腕前は口コミで徐々に広がり、近所の人に頼まれてスーツやワンピースを縫い上げることもあったという。

「お金のためじゃない、喜んでくれる顔が見たくて」と、当時を振り返る山田さん。重い荷物を抱えて配達を手伝ってくれた幼い子どもたちの姿は、今も大切な記憶として胸に刻まれている。

本格的に手刺繍に取り組み始めたのは、90歳を過ぎてから。「子どもや孫たちに何か形あるものを残したい」という一念だった。驚くべきは、一般的な刺繍枠を使わず、自身の左手を枠代わりにして布を操る技法。下絵から手がける大作は、完成までに2、3カ月を要することも。几帳面で一筋の乱れもない糸目は、家族を想い、長年針を動かし続けてきた山田さんの慈愛にも似ている。

その健やかさを支えるのは、自らを律する日々の習慣だ。毎朝7時半に起床、新聞の精読と一日の計画立案を欠かさない。食生活も旺盛で、朝から肉や卵をしっかり摂る。数十年間欠かさないトマトは自ら「特製トマトジャム」に仕立てて楽しんでいるという。

作品の一部は谷津のレストラン「銀のひつじ」で手に取ることが出来る。「誰かに喜んでもらえるのが一番うれしい」と、柔らかな笑顔でインタビューに答えてくれた。一針一針に心を込めて制作に励む姿は、私たちに豊かに年を重ねる喜びを教えてくれている。

この記事を書いたライター

今月のプレゼント