吉法師の読書案内いのちの糧・良書吉日
『私の幕末維新史』渡辺京二(新潮社刊)

本書は近代思想史家の渡辺京二氏の講演録をまとめたものだ。
幕藩体制が揺らぎ、明治維新がなぜ起こったのか。社会の動きをみると、消費経済の広がりとともに藩財政が破綻してきたこと、さらに、中、下級武士階層と庄屋豪農層の二つの階層が変革のエネルギーを持ってきたことを挙げている。
ペルーの黒船来航は未曽有の出来事であった。当初、日本中の人々が国難に至るという強い危機感を抱いたが、開国に踏み切った幕府の対応に全国的な非難が巻き起こる状況にはならなかった。ところが、アメリカ側が通商条約を提案すると、欧米列強による清国蹂躙(じゅうりん)が幕府を震撼させ、この条約を締結する際には日本全国で反対運動が広まった。
万延元年から文久元年(1860年~1861年)にかけて、幕府は朝廷と一体化する「公武合体」を政策の中心に据える。翌年、尊王攘夷運動が全国的に広がり、幕府は力の衰えをあらわにする。雄藩と呼ばれる有力藩が国内政治のリーダーシップをとる動きが出始め、幕府の270年続いた政治のありかたの転換を迫られる。将軍の専制ではなく公議政治が必要だと考えられるようになった。
薩摩は幕府中心の国内改革を模索してきたが、幕府を見放し、倒幕の機運が芽生えた。幕府が日本政治の全権を掌握するのではなく、天皇の下に位置し、大統領のようにリーダー的存在として影響力を維持していくという「大政奉還」を徳川慶喜は朝廷に上奏。だが、薩摩は是が非でも徳川との軍事衝突に持っていくことを考えるようになる。朝廷からの討幕の密勅をもって、鳥羽伏見の戦いへと突入、そして戊辰戦争へと広がっていく。
著者は外国人が見た幕末明治の日本を描いている著書を紹介。イギリスのオールコック、アメリカのハリス、ロシアのゴンチャロフそしてイギリスのイザベラ・バードなどである。これが大変面白く、著者ならではの慧眼で語られている。
■吉法師
漁師町の生まれ。青春は陸上競技に明け暮れ、その後、トライアスロンにも挑戦。中学生時代、国語教師への憧れから、読書に目覚め、今や本の虫。
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