とある「きれいごと」よりもきれいなマルシェ
「柏から世界へ。最高のピッツァとコーヒーを。」
そんな謳い文句のイベントが開催された。
6月14日、千葉県柏市の吉野沢保育園で開催された「ヴァモスとトーンズ」にお邪魔した。
柏レイソルの戸嶋祥郎が経営するナポリピッツァ店である「STADIO PIZZA VAMOS!!!」と犬飼智也が経営するカフェ「TONÉS COFFEE ROASTERS」が吉野沢保育園とコラボレーション。昼下がりのマルシェを開催。
…となれば、オープン時からたくさんのレイソルサポーターや地域の方々が列を作ったことは想像に容易く、事実、午後には完売したメニューもあるほどの盛況ぶりだった。

「広報の方もがんばりました。予想以上の反響がありました。ありがたいなと思います」と話すのはこのマルシェを企画した吉野沢保育園・田口史理事長。
イベントの開催を知った時からあった「でも、なぜ、保育園さんが?」との疑問に対して、田口理事長はこのような経緯を話してくれた。
「近年、園として、『地域支援』に取り組んできました。これまでは町会のお祭りにブースを出店する形だったのですが、保育園の機能を活かす形を考えた中で、『クラスター』さんや『絹江餃子』さん、『日立台カリー部』さんや『Kitchentruck Amarillo』さんのキッチンカーもお呼びしました。今回は私がTONÉSにお邪魔した際に本件の相談をさせていただきました。私は以前に柏市役所で働いていたのですが、その際に『カシニワ制度』の件でもご縁があった犬飼さんへ今回のお話をさせていたたきまして、その際に『ぜひ、恩返しを』と言っていただき、その後に戸嶋さんからも『地域支援にも関心が』とのお話があり、『では、ぜひ!』と。このオフのタイミングで企画させていただいたというわけです」
柏駅を西口から出て徒歩数分の国道6号線上に構える「TONÉS COFFEE ROASTERS」ー。

2024年秋のオープン以来、こだわりのコーヒー販売を軸に、独自のアパレル展開や柏レイソルのオフィシャルライセンスを取得してのグッズ展開、イベントスペースとしての展開など数々のユニークなアイデアで多くのレイソルサポーターハートを鷲掴みにしているカフェである。
もうこのあたりの詳細となると、私もユーザーの方々に遠く及ばないわけだが、週末限定メニューであるティラミスはぜひご賞味いただきたい。
オーナーは柏レイソル・犬飼智也。通称「ワンちゃん」である。
前述したような数々の展開は多趣味で鳴らす犬飼のワードローブを覗くような感覚もあれば、視線の先を垣間見るような感覚もある。それらをひと言で言えば、「洒落ている」。余計な言葉を出させてもらえば、「クセが強い」。ただ、常に「刺激的」な空間だ。
ただ、このカフェの素晴らしいところはそんな個性に対しての「力みの無さ」と「独特のバランス感覚」か。もっともっとカッコつけて経営を続けてしまったしても、おそらくうまくいったはずなのに、丁寧にこの街の一部として構えてみせている。
田口理事長も言及されていた「地域貢献」はその最たる姿勢だと思う。
犬飼は今回のマルシェの合間でこんな話をしてくれた。
「地域貢献?そう言っていただけるのはありがたい限りなのですが、正直に言って田口理事長のおかげなんですよ。かねてからお付き合いいただいてる田口さんに自分たちはお世話になりっぱなしです(笑)。今回のこのようなこういう機会というのは、いつも自分たちを支えてくださっているみなさんやファン・サポーター。また、地域の方々への恩返しに重きを置いた催しだと思っているんです。もちろん、何かを経営をする以上、売り上げなどが重要ですが、自分たちは『地域への恩返し』ということも同じように重要だと思っているんです。今日、ここへ足を運んでくれた方々の様子を見る限り、すごい喜んでくれていた。その様子を見るだけで自分たちは幸せですし、そういうコミュニケーションを通じて、『開催してよかったな』って気持ちになりますからね」

そう話す犬飼の横で微笑んでいたのは「STADIO PIZZA VAMOS!!!」オーナーの戸嶋。
2025年春にオープンしたナポリピッツァ店である。場所は柏市中央二丁目だが、分かりやすくお伝えすると、「柏市立第三小学校の横」だ。
レイソルの試合開催日となれば、ピザを求めて列を成すたくさんのレイソルサポーターで賑わう様子はすでに当たり前の風景となりつつあるのだが、この店もまた個性的。
こじんまりとした店内の間取りは、まさにヨーロッパの街中にある飲食店のそれに近い。コンパクトな厨房からとんでもないご馳走を提供してくれる魔法がこの店にもあるし、そのコンパクトな店内を武器に戸嶋や選手たちのファンミーティングの場としても活用されている。また、「『気さくな人』を表現するとこの人になる」と表現して差し支えないピザ職人・松本学志シェフもどこか「ラテン」を感じさせる。
柏レイソルで活躍をしながら、経営者としてのキャリアをスタートさせ、「日本プロサッカー選手会副会長」としても活躍する戸嶋。この3つのキャリアに留まることなく、その都度、履いた草鞋の数の分だけのノウハウを今後に活かしていくことになるのだろう。
戸嶋はホッとした表情でこう話してくれた。

「自分たちは参加へ向けた準備のみをすればいいというところまで仕込んでくれた田口理事長のご尽力に感謝しています。今回は特に『再び開催をできるよう、この初回はしっかりいきましょう』とのことで。そんな理事長のお力とTONÉSさんの『おこぼれ』を頂戴する感じで(笑)。ただ、こうやってイベントを開催するだけで『何かの特別な場』を作り出せるわけですから、それだけで楽しいですしね、やってよかったなと痛感しているところです。自分たちの業態の共通点は『お客様が集まる場所』。こういう機会を通じて、『将来の子供たちのために』という考えを共有しながら良い会を開けたと思います。どんな形はまだわかりませんが、『また開催したいな・できたらいいな』って思っています」
それぞれの感触をこう話してくれた2人は揃ってもう一度感謝を口にした。
「開店して1年半。おかげさまでこの11月で2周年を迎えます。レイソルの試合の前後にサポーターが気軽に集まれる場所ってなると、なかなか無かったと思うので、『カフェ』という形態でそう言った場所を作れた実感はすごくある。実際に『TONÉSで知り合ったサポーター同士でレイソルの試合へ行った』ってお話を直接聞いたりもしますね。そんな話が生まれただけで自分はうれしいです。自分のこれだけやっていると対戦チームの選手の中に友人もいますから、彼たちも気に掛けてくれていて、ふらっと遊びに来てくれたりと、たくさんの方々が集まってくれているんです。本当にみなさんに支えられてのここまでです」(犬飼)
「自分たちが思っていた以上の反響があったことにも感謝しかありません。今日もオープン時からたくさんの方々が待ってくれていましたから。『地域への恩返し』など、『こちらからパワーを皆さんへ与えられたら』と思っていたつもりが、結果的にみなさんからのパワーをいただくことになった。それについては本当にありがたい限りです。自分たちはレイソルの選手として、サッカーや試合を通じてまた『恩返し』を返していかなくてはいけないと、また気持ちを新たにした1日でした」(戸嶋)

柏レイソルのパートナー企業でもある同保育園ではあるが、レイソル周辺にとらわれず、今後も様々な形の「地域支援」を模索するモチベーションがあるという。
「今日のように『お2人と再び…』となると、冬のタイミングまで待たなくてはいけませんが、また新たな方々をお呼びすることで、新たな地域交流をできたらと考えているところです。ただ、今回は実にたくさんの方々に足を運んでいただけてうれしかったですし、我々の保育園や『TONÉS』さんと『VAMOS!!!』さんのことも知っていただく機会にもなった。これを機に両方のお店にまたたくさんのお客様が足を運ぶきっかけになればいいですよね」

保育園という児童福祉施設が取り組む地域支援だ。余計な力みや色気などは無いが、田口理事長の「地域のために」というささやかで、純粋で、「きれいごと」よりもさらにきれいな願いが詰まった見事なイベントであった。
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