球宴。競演。再会。

6月13日に東京都のMUFGスタジアムで開催された「JリーグオールスターDAZNカップ」ー。

柏レイソルからは古賀太陽・小泉佳穂・細谷真大の3選手がファン投票により選出され、彼らはリーグ屈指のスター選手としての価値を証明した。

「レイソルや他クラブのサポーターのみなさんがたくさん投票してくれたのだと思いますし、自分がこのような舞台に選出してもらえるなんて少し前では想像できなかったのでとても光栄なことです」(古賀)

「自分の中で、『この選手と一緒にサッカーをしてみたいな』って選手ばかりが揃っていたので楽しみたい。ひとえにサポーターのみなさんのおかげ。みなさんには楽しんでいただきたいです」(小泉)

「他チームの選手とプレーできることが楽しみ。代表チームとは違う楽しみがありそうですし、そういった雰囲気も楽しみたいし、『細谷を選んでよかった!』って思ってもらえる活躍をしたいです」(細谷)

選出時にそう話した3選手は「J1EAST」のユニフォームに袖を通して、その言葉の通りに普段はしのぎを削り合う選手たちとピッチで躍動。地域とカテゴリーに基づいた6チーム編成でカップを争った。

まずは前日の味の素フィールド西が丘での公式練習。いつもとは違う面々やスタッフたちといつもとは違うウェアを着て体を動かしていた小泉は汗を拭いながらこう話していた。

「楽しかった。監督が代わると全然違いましたね。『こういう感じでやるんだ?』という刺激がありました。最優秀選手?賞品を調べましょう。それ次第でシュートをバンバン打つか決めますかね(笑)」

普段ではなかなか聞けないそんなリップサービスが飛び出すのもこのような大会ならではだったが、レイソル組が所属した「J1EAST」は1勝1敗の3位でフィニッシュ。盛大な盛り上がりを見せたその試合後、穏やかな表情で会場を去ろうとしていた細谷は大会をこう振り返った。

「このオールスター戦独特の雰囲気を楽しむことができました。特に緊張などは無くて、特別なルールだったり、いつもより短時間でプレーをする大会でもあって、少し疲れてしまいましたけど、素晴らしい大会になったと思います。特に今日は自分がまだ駆け出しの頃に一緒にレイソルで戦った先輩たちとまたこうやって関われたことが個人的にすごくうれしかった。自分はまだ『スター選手』には程遠い選手ですが、このような大会がまたあるのなら、ぜひ出場をしたいし、常に選出してもらえる選手に自分はなりたい。自分の名と価値をもっと高めないといけませんね。この大会に次回があれば、自分は必ず出たいです」

様々な再会や出会いは「オールスター戦」の華。細谷もその部分を担う存在ではあるものの、また特別な感覚を覚えていたようだ。

大会には現在の柏レイソルに所属している3選手以外にも、C大阪・中村航輔、G大阪・中谷進之介、岡山・江坂任、いわき・佐々木雅士、熊本・岩下航、鹿児島・杉井颯、北九州・吉原楓人。育成年代を日立台で過ごした細井響と新保海鈴の横浜コンビ。惜しまれながら直前で不参加となった大宮・山本桜大など、所縁ある選手たちがそれぞれのクラブやカテゴリーの「顔」として多数選出されたことも重要なトピックスだった。

彼らそれぞれのキャリアの中で、実に様々な歩みがあっての今ではあるが、「Jリーグ」というシーンの中心で鮮やかに輝き続けていることが何より誇らしかった。

例えば、G大阪の中谷。

レイソルから名古屋へ進み、日本代表選出を経験するなどして、現在プレーするG大阪では今春に「ACL2」を制覇するなど素晴らしい歩みを見せている国内屈指のトップランナーの1人だ。このオールスター戦でもCKからゴールを決めるなどの活躍を見せるだけてなく、オフ・ザ・ピッチでは盟友・中村航輔(C大阪)と共に独特な貫禄を放っていた。

Jリーグの夏開幕を前に催されたこの大会を1つの節目とした時、彼のようなキャリアを持つ選手はどのような考えを持つものなのか、マイクを向けさせてもらった。

「ゴール?ありがとうございます。『カリスマックス』?いきなり負けたので、やめておきました(笑)。負けてしまって、その悔しさはありますけど、楽しかったから今日はそれでいいですよ。オールスター戦自体、良い試みだと思っています。幸運にも今年は『ACL2』で優勝することができましたけど、レイソルアカデミーで育って、名古屋とG大阪で戦ってきて、自分の現在がある。自分はずっと『上を目指して』という気持ちでやってきたつもり。その結果の1つとして『ACL2』という大きなタイトルを獲れたことは1人の選手として幸せなこと。こうやってオールスターに選出してもらえる選手にはなったけど、まだまだ自分の上には素晴らしい選手がたくさんいる。その中の『トップ・オブ・トップ』を目指していくのがこれからの目標になりますね。今回はレイソル絡みというか、レイソルアカデミー組の選手も多くいて、自分もこの大会を楽しんでいました」(中谷)

その中谷の背後から現れたのは岡山でプレーする江坂だった。この日の過ごし方からして、大会をかなり満喫しているように映った選手の1人。

今回選出されたタレントの個性で言えば、「J1WEST」はかなり強烈な部類。その中の1人である江坂に、前日練習で「強そうだ」と話を向けると、「いやいや、そんなことないで。EASTは全体的に若いチームやろ?WESTは自分を含めて、『おっさん』ばっかりやからな(笑)」と言ってはいたが、群馬から始まり、韓国・蔚山を経て、岡山で予想をしていた以上に右手の人差し指を力強くまっすぐ指している印象が強いのが、少々意外と言えば意外だが、今やリーグを代表する名手の1人。できたら、なんとかして立田悠悟も連れて来て欲しかった。

そんな江坂にも、中谷と同じ趣旨の質問を投げかけた。

「ん?『おっさんたち』?めっちゃうまかったな(笑)。なかなか無い大会に出られて自分はうれしかったです。お金も時間も掛かった、この規模の大会ですからね、なかなかあるものじゃないし、選んでもらえてうれしかったし、やっていて楽しかったです。特に今回初めてチームメイトになった、香川真司さんや乾貴士さんたちは『エンタメ』をすごく分かってはる先輩たちやから、負けてはしまいましたけど、良いプレーやゴールも生まれたと思う。こうやって、ピッチ上でも、きっと、スタンドのファン・サポーターのみなさんの間にも妙な緊張感やギスギス感の無い『ピュアな空間』を作ってみせたということは今後のJリーグ全体にとっても、リーグ自体の今後の発展にとっても大きな機会になってくれたらと思う。これからのキャリア?難しいな!それだけが全然分からへん。自分は『1年1年を必死でやっている選手』なんで。ここまで本当にたくさんの経験をさせてもらって、今の『江坂任』がいるのもだとは常に思っているし、これまで経験したきたことの全てが意味のあるものだったと思います」(江坂)

いわきへ育成型期限付き移籍中の佐々木とも再会できた。

大会前から、「マオにPKを教えないと!」とウソ吹いていたし、試合前から楽しそうにしていたが、佐々木にとっては今回の独特なチーム編成が唯一の悩みの種だった。

今回の「再会」で言えば、北九州へ育成型期限付き移籍中の吉原の選出も楽しみの1つだった。

活躍自体はハイライトなどを通じ確認はしているつもりではある。昨冬にも少しの時間ではあるが、近況などを聞かせてもらっていた。そして、今回の再会で感じたのは体付きも良くなり、あどけなさも収まってきていた。前日練習では「自分がこの場にいることが驚きですけど、楽しみだし、がんばります」と話していたが、あの魅力的なドリブルから展開を切り拓くことはできずにいた印象。

セレモニー前のわずかな時間ではあったが、吉原にオールスター戦当日に感じた気持ちを改めて聞かせてもらった。

「自分の力不足を痛感しています。せっかくのこのような機会の中で、『自分らしさ』というものを出すまでいけなかったことがものすごく悔しくて。全然ダメで悔しい思いです。自分がこのような舞台に参加できたことは少しだけ自信にはなりましたけど、今は悔しくて。今の『自分がこのリーグの中でどんな選手なのか』を知れたことが今回の思い出になりました。またがんばります」(吉原)

吉原の場合、自分が不出来だった後の感情表現がユニークな選手だっただけに、去来した感情を言語化しただけでも立派な成長である。

横浜のキャプテンを担う細井との再会もオールスター戦らしい思い出となった。

細井と最後に会ったのは…おそらく、いつかのレイソルトップチームの試合前、ゴール裏で話をして以来か。元々は日立台のお膝元で育った少年。ほぼ、「週7」で日立台人工芝グラウンドへ訪れて、サッカーに興じていたような少年も今や見上げて話すほど逞しくなっていた。

細井を捕まえていると、後ろを通り過ぎた細谷が軽くちょっかいを掛けてから去って行ったのも「好きな光景」だった。

だが、まさかオールスター戦を制するとは!

「今日はこんなに試合をする予定じゃなかったんですけどね(笑)。探り探りでやってましたが、良い経験をしました。でも、自分の武器である『ロングスロー』を投げたかったなって思いです。レイソルアカデミーを途中で去ることになった大卒1年目の自分が、このような大会に選んでもらえていることは自信にしなくてはいけないと思いますけど、もっとサッカー選手としての自覚を持つべきだし、こういう舞台でもしっかりと目立っておけることは大事だと思いました。レイソルアカデミーを退団して7年かな、それ以上が経つわけですけど、プロ入りを意識したのはほんの数年前。そんな自分がキャプテンをさせてもらってはいますけど、なんで自分が指名されたのかと驚いていたくらいですし、いろんなことができているようでも自分はまだまだの選手。自分なりにたくさん経験を積んだつもりではありますけど、こういう素晴らしい舞台で感じたのは『自分はまだまだやることばかりだな』という気持ちです」(細井)

その細井との会話に割り込んできたの鹿児島・杉井だった。

ただ、この日は格上相手に見事なアシストを放ち、スタジアムを沸かせた「助演プレイヤー賞」級の選手の1人。そのくらいは容認しよう。しかも、この杉井という男、かなりしぶとい。土壇場での「Jリーグ推薦枠」で、この眩い舞台に馳せ参じてみせたことは賞賛に値する。

「大会ベストゴールのアシストをできて光栄です。今日この大会に出場している選手の中で『トライアウト』を経験した選手が何人いますかね。今日こんなすごい場所にいられるのはレイソルからスタートして、金沢や鳥取、長野、鹿児島と所属してきた全てのチームのおかげ。少しずつの積み重ねの連続なんだと思います。みなさん輝かしいキャリアの選手たちばかりですけど、自分はだいぶ『しぶとい』選手ですね。すごく大事なことなんだと思いましたし、この『しぶとさは今後に繋がる』と信じてやっていきます。個人的には今回J3を卒業してJ2へ挑戦できるわけですから。このキャリア形成をよりさらに良いものにしていきたいです。レイソルを離れてからの7年。簡単じゃなくて大変でしたけど、居場所を少しずつ広げながら、それをしっかりと大きくして、またしぶとく生き残っています。なかなか学べない、そんな力を身につけて、『やかましさ』を忘れずに(笑)。選手としても、『こっちだって積み上げてきたものはあるんだよ』ということを今夏からまた表現できたらいいなって」(杉井)

そんな杉井は今夏よりJ2リーグ・山形へ移籍。J2への個人昇格を決めている。この「しぶとさ」はまた新たな杉井を造る。

そして、大会取材の最後。

古賀が記者の取材を受けていた。

どうやら、「楽し過ぎました。自分はオールスター戦をまたやりたいです。できたら、来年も」との話だった。

西が丘の前日練習の時から、この瞬間に夢中な表情が印象的だった。曰く、「昨日の最初の『ロンド』からずっと楽しかったし、夢中でしたから。周りはみんな巧い選手ばかりだったので、またやりたいんですよね」とのこと。

最後だから聞いてみた。

並み居る「名手たち」や「スター選手たち」を差し置いて大会のメインビジュアル中央のやや先頭に位置してみせたことについて。

古賀は照れくさそうにこう話した。

「…それなんですけど、他の選手ではなくて、自分が真ん中で大丈夫だったんですかね(笑)。もし、この大会の集客に影響とかがあったとしたら本当に申し訳ないですし」

なるほどなるほど。

どうやら古賀は素晴らしい選手たちとの素晴らしい時間に夢中だったようだから、気づいていないのかも知れないが、スタジアムは6万人を超えるサポーターで満員でしたよ。みんなキラキラして見えましたし、このスタジアム独特の時間差で上から声が降ってくる瞬間は何度もありました。

そんな素晴らしい大会のメインビジュアルに我らが古賀太陽が立っているなんて、少し前なら想像ができなかったくらいだが、堂々とその役割を果たしたと思います。

唯一、残ってしまった悔いをここに残すとするならば、あの煌びやかなセレモニーの中で「SEE YOU NEXT YEAR!!」のアナウンスが無かったことくらい。

だから、もう一度、残します。

大会メインビジュアル、「センター」の選手が言っていたことを残します。

「オールスター、なんとか、またやりたいです。楽し過ぎました。また出たいです」

どうでしょう?Jリーグさん。次は関西あたりで。

この記事を書いたライター

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