大きなものを背負ってー古谷柊介

「自分としては『記憶』というか『印象に残るようなプレーをしたい』と思っていた」

…だとすれば、なかなかの達成度だったように思う。8月1日の「ちばぎんカップ」で起用された特別指定選手・古谷柊介に託された時間は30分ほど。そんなに長い時間では無かったが、チャンスは来た。左サイドに入った古谷は数回のアタックとチャンスメイクでサポーターへの自己PRを終えた。

「あの試合、『自分の特長を出すことを考えてプレーすることはできたかな』とは思っていて、その中で結果に繋がるプレーだったり、もっとゴールに向かえるプレーができたら、自分としてもチームとしてもって良かったかなって思っています。最初の入りとしては、『悪くはなかった方かな』と思っていて。ここからどう結果に結びつけていくかが大事。次はそれをやっていきたいです」

テクニカルな仕掛けというよりは自分の間合いで勝負できるタイプのようにも見えたが、最大のハイライトは試合終盤のスプリントか。ロングボールに反応した古谷は相手CBとのスピード勝負に完勝。その見事さにスタジアムは沸いた。

「チームに特長を理解してもらえているので、長いボールへのスピード勝負だったり、自分にボールを付けてもらって、自分が1対1を仕掛けることも武器にできると思っています。自分がボールをロストばかりしていると信頼も無くなってしまいます。その『信頼関係』だったり、ホールを失わずに突破できるようにしていくために、良い時間を過ごしているので次に活かしたいです」

会場となったフクダ電子アリーナは日本体育大学柏高校時代に同校を自身のゴールで初の高校サッカー選手権出場(2022年・第101回大会)へ導いたことがあるゲンの良いスタジアムでもあった。

あの頃の古谷といえば、地元のJリーグクラブ・柏レイソルに憧れる高校サッカー選手…いや、どちらかといえば、「レイソルガチ勢」の部類のサポーターだった。部活動などがあり、制限はあったはすだが、千葉県野田市出身の青年だ。サッカーボールと一緒に育ちながら、ずっと見てきたレイソルへ対して特別な思いがあった。なんせ、初めての練習参加の際はかなり浮かれて夢心地で日立台へ来てしまったほどだったのだから。

柏レイソルの選手として初めて見上げたレイソルサポーターたちをどう感じていたのかはぜひ聞きたかった。

「もちろん、試合中は必死で本当にそれどころじゃない気分でプレーしていましたけど、ベンチに座っている時はサポーターが歌っていた応援歌を普通に聞いている自分というか…つい口ずさんでしまっていたりするくらい、応援歌が分かっちゃうんで(笑)、『面白いな』と思っていました。特に試合前の挨拶に出てきた時にゴール裏のみなさんを下から見て、スタンド全体のサポーターを見渡して。なんというか、『景色がすごい大きい』と思ったし、『これから自分はすごいものを背負って戦っていくことにるんだな』と感じました。あの自分が今こんな感じなんだって」

質の良いインパクトを残してすぐに古谷はイタリアへ飛び立った。同期となる中央大学・常藤奏らと共に全日本大学選抜の1人として10日間で5試合という武者修行に出た。キャプテンを務めた常藤はゴールを決めたが、古谷はノーゴール。

「環境的にもその食事や移動の環境、そのあたりを含む試合環境も過酷で、『メンタル強化の旅だな』と感じでいました。その中で結果出すことだったりができたら、もっと成長できたはず。そこはま切り替えてやっていきたいです」

古谷が成長にこだわるのには訳がある。

彼は年代別日本代表選手の1人。2028年開催予定のロス五輪出場を目指す世代の1人でもあるからだ。この9月には愛知県で開催予定の「第20回アジア競技大会」が待っている。

「アジア大会まで1ヶ月間。参加するまでのこの1ヶ月で試合に絡んでゴールやアシストをしてチームが勝ということが自分の中でもベスト。良い形でアジア大会を獲りいくことが今は大事なので、『必ず結果を残す』と毎日を取り組んでいます」

古谷に待つ向こう2年間のスケジュールはびっしりだ。ACLEの登録に関しては1度見送られるはずだが、レイソルの主力へと食い込む前提で考えてみても、今夏のアジア大会から始まり、2027年には「Eー1選手権」も開催予定。2028年にはロス五輪予選が待っている。同大会は1月の開催が定番で、日本開催が決まっていることは実に素晴らしいのだが、その出場枠は「2」。簡単な戦いではない。

「自分の目標は『W杯優勝』ー。そのために大切になるのは2028年の『ロス五輪』。ロス五輪の前に日本代表へ食い込むことが必要になるものだと思っていますから、プロ1年目の自分の結果は大切に考えているんです。そう考えてみると、1年目の自分の『出場時間』やプレーそのものの『質』、そして『チームの勝利』は大事になる」

果てしないサイズ感の夢もまた素晴らしいが、そのための素晴らしい歩みを見せてくれることも期待している。まずは「柏レイソルの古谷柊介」としての素晴らしい第一歩を踏み出してもらいたい。何故なら、私は彼が教えてくれた、この心意気が大好きだからだ。

「日立台は『レイソルの選手とファン・サポーターが1つになって相手と戦う空間でありスタジアム』だと今も思っていますし、そこで早く戦いたい。いつも全力で応援してもらえる以上、自分も全力で戦っていきますし、みなさんを喜ばせれるような選手になっていきたいですね」

その昔、柏レイソルが放った歴史的名コピーの1つとして我々に刷り込まれてきた「柏から世界へ」というアティチュード。

少しの間、静かに見ていたら、ちらほらと「なんか似てるよね」というコピーを見かけてきたが、そのアティチュードが日立台に帰ってきたこの年に、それを地で行く運命にある古谷にはその運命をぶち抜いて欲しい。君が背負った「大きなもの」たちなら、きっと君にこう歌う。君が両膝に手を付き肩を揺らしていたらきっとこう歌う。

「駆け抜けろよ、時間切れまで。勝負決めるゴール目指し!」

さらに好きなのは古谷のこの気持ち。

「自分はずっとレイソルを見てきたので、『日立台に立ちたい』という思いは人一倍強いです。きっと、『自分が見てきた日立台という景色の中に自分が立つ』ということは、自分の『強さ』にもなると思っているんです」

その通り。君が見たあの「大きなもの」たちはそんな思いの選手にとびきり厳しくてとびきり優しい。ガチ勢の古谷なら、やいのやいの言わずとも十分理解しているはずだとは思うけども。

この記事を書いたライター

今月のプレゼント