「その時」の前の足踏み
あの難解な言語・カステジャーノを介さなくとも、リカルド・ロドリゲス監督が放ったメッセージは明らかだった。
何かしらの強いエネルギーを溜めていても不思議ではなかった若者たちとR・ロドリゲス監督の距離は1mほどだったか。明らかにそこに発生していた「それなりの緊張感」の中へ飛び込むことを選び、その場を収めた。実に誠実な姿勢で。
「責められるべきは私だ。選手たちではない。私の責任だ」
そう翻訳できたのは繰り返した誠実なジェスチャーだけでなく、昨年にも類似した瞬間があったから。その際に「責められるべきは…」との旨の信条を私たちに伝えていたからだ。その信条が伝わっていないのだとしたら、それは私の腕不足だ。責められるべきは私である。

また、その素晴らしさの構造は「フェアネス」と「信頼関係」があってのこと。その上では「昨年の『貯金』」が担保となっていたことは言うまでもない。
その姿を正面から見つめたサポーターたち、その背中を見つめた選手たち、それぞれに迫りくる感情があったはず。少し離れた席から見ていたサポーターたちにも同じように思うところはあるはずだが、少なくともその光景を斜めから見ていた立場からすれば、「彼らは重要な瞬間を乗り越えた。しかも、極めて誠実に」と見ていた。
そんな瞬間を目の当たりにできたのは素晴らしいことだが、「レイソルは監督とサポーターは最高の関係だ」などという湯加減で語りたい訳ではない。ご存知の通り、ここまでの成績は望んだものではないのは明らかだからだ。たとえ、そのリーグ戦が極めて稀で特殊な性格を持った形式だったとしても、「万々歳!」とはいってはいない。
リーグの最終盤を迎えるタイミングで、R・ロドリゲス監督はチームの「ここまで」をこう話した。
「今季は『良くないシーズン』だと捉えなくてはいけない。様々な障壁がありました。怪我人も体調不良者、退場処分もありました。重要な選手が重要なタイミングで不在となったり、内容的にも極端に悪い試合が目立っていたわけではなくても、『勝利には足りていなかった』という試合が多かったのは事実。未来を見据えて、『多くの選手を起用してみよう』という機会もあったが、その機会もすべてうまくいったとはいえなかった」

足踏みを続けたレイソルに待ち焦がれた「吉報」が舞い込んだ。この8月にはJ1リーグが開幕し、天皇杯とルヴァン杯という国内カップ戦に加えて、「AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)」への参戦が決定。おそらく、少しびっくりする時期にその大会が入ってくる。
「今夏からはACLEを含めた4つの大会を戦う日程が待つ私たちにとっては『その準備期間になった』と捉えることもできるし、昨季の最後までタイトル争いを全力で戦ってくれた。その最後の瞬間に望んだ見返りを得られずに今季が始まった。選手たちはロボットではないので、再びあのパフォーマンスを出し続けるのは決して簡単なことではない。ACLEの出場が決まってからはチームの状態の上向きでモチベーションもパフォーマンスも取り戻しつつある。チームとしても個人レベルでもさらに成長した状態で開幕へ向かいたい」
相当な期間、「週・2試合」を繰り返すことになる以上は回復が優先事項となり、修正などに費やせる時間は限られてくる。「アジアの東側」の戦いから始まるとはいっても、アジアは広いし、瞬間移動の技術はまだ未完成。準備期間は短く、試合日程についてはある程度の恩恵はあれど簡単にはいかない以上、「既に選手の選考や新たな選手の獲得について強化部と連携を取っている。ポジションバランスを考慮しながら、怪我から戻ってくる選手たちも含めて良いチームを作りたい」という強化面も重要な解決手段となる。
故に「準備」がものをいうし、その上で「結束」は最も重要だ。

「残り試合も重要になってくる。1試合1試合を『とても重要な試合』として臨み、勝利を目指し戦いたいと思うし、この先は昨年に見せたパフォーマンスを取り戻していきたい。その為にはチーム全員。メンバー外を含めたチームの全員が重要になる。来季へのオフの短い、プレシーズンも4週間程度だ。残り試合もより良いパフォーマンスを表現したいし、より良いレベルアップをした上で開幕を迎えたい」
一見、ハッピーそうには見えても、実は何度もあった窮地を何度も乗り越えてきたR・ロドリゲス監督と柏レイソル。私たちはそれを見てきたし、私たちは今、その「反動」を見ている。

いつだって、言ってしまえば、私たちにとって柏レイソルとは「5つ目の感情」だ。強く美しいサッカーは素晴らしい。万雷の「ロレンソ」は何故だか常に涙腺を刺激する。そんな私たちが次に見たいのは「レイソルが『レイソル』を取り戻すその時」だ。想定より少しだけ待ち焦がれてはいるものの、彼らが私たちにくれた喜びの数・種類を思えば、今のところの足踏みくらいなんともない。
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