「市」と「クラブ」が放った、「ぬくもり型」の関係性

 千葉県白井市の特産物・「しろいの梨」といえば、私たち柏レイソルサポーターにとっても欠かせないアイテムと知られている。白井市と梨の歩みは明治時代にまで遡ると言われており、千葉県はこの白井市の「活躍」もあり、全国的にも梨の「産出額・生産量」で日本一を誇る、「市の宝」である。

 また、白井市はこれまで、もう長きに渡り、「白井ホームタウンデー」を開催しており、梨の試食の大盤振る舞いでレイソルに力強い声援を送り続けるレイソルサポーターのノドを癒してくれてきたホームタウンの1つとして愛されている。

 また、白井市と柏レイソルは「包括連携協定」を結んだ5市のうちの1市。両者の歩みは新しい段階に突入していた。

 この協定は「スポーツの振興」「教育、人材育成」「健康増進」、「地域活性化の推進」、「地域の安心安全」、「情報発信や広報」を誓い合うものだったが、協定の締結から2ヶ月ほどで早速新しい条項が加わった。それは「困っているのなら、助けさせてくださいよ」というもの。

 梨の成育にとって「雨」は「花粉」と共に重要な役割を果たすものだが、長く千葉県の上空に居座り続けていた雨雲の存在は梨の成育の妨げにもなっていたし、人々の生活や人生を少し変えてしまった。この状況を鑑みた白井市は市の産業を祝う「白井市ふるさとまつり」の中止を決定。だが、一方でその祭りでも様々な役割を果たすはずだった大切な梨は行き先を失ってしまった。

 そこで手を差し伸べたのが柏レイソル。

「困っているのなら、助けさせてくださいよ」

 同じ傘の下にいるからこそのひと言だった。

 白井市からの提案を受けたレイソルは10月17日の名古屋戦の試合前に「しろいの梨」の販売会を緊急決定。レイソルはお米と梨という農作物を販売したことになるのだが、前回の「レイソル米」の1500円という「札一枚と500円」値付けが購入スピードに影響していたというノウハウを活用して、今回は「3個入り1000円」という値付けを採用。戸嶋祥郎と手塚康平、リカルド・ロドリゲス監督も登場したPR動画も作成するスピード感などもあってか、梨は白井市とレイソルの予想を大きく上回る形で、50分ほどで完売してしまった。

 本来であれば、この日、この場で購入イベントに参加をする予定だった松本健太は「接触型ファンイベント」に一家言あるタイプの選手として広く知られている。そんな松本に多様化を見せるレイソルのクラブイベントから得た感触についてを聞いた。

「自分が在籍している、この数年ですごく変わったところでもあるし、自分も色々なイベントへ参加させてもらっていくことで、レイソルを応援してくれている人たちの熱を直接感じてきました。自分たち選手はその熱がモチベーションに繋がりますし、僕らのことを知ってもらえた上で、応援しに来てもらえる相互関係としても、『良い関係が築けているな』と実感してきましたし、その繰り返しが『地域密着型』の、地域から愛されるクラブという形へと繋がるのであれば、自分はまた積極的に参加をしたい」

 梨を直接購入者へ渡すことはできなかったが、そう話す松本を取り囲むサポーターたち。その熱はなかなかのものだったし、照れ笑いの松本を含め、皆一様に笑顔という良い光景だった。この状況を松本はモチベーションにまた変えるはず。ひとしきり、照れ終わった松本は改めて「関係性」に言及。

「やはり、互いの支え合いというか、今回のような『困っていたら助け合う』という『お願いし合える関係』というのはすごい大事なことだと思いますし、この『関係性』が大事なのだと思う。これからも大事にしていきたいなと思いました」

 言ってしまえば、何気無い販売会でもあった。しかし、クラブが市を助けて、選手たちがその重要な一役を担う模範的な建て付けの中から、いわゆる「推し」という、どこか自分本意でいて、着脱可能性が高く、現代的な姿勢よりも少し先にあり、奥行きがあり、関係性的に成熟した「助けさせてください」という姿勢から、何かを必要とされる場面でサッと手を差し伸べられること、そして、その手を握り切り返せる両者のフラットな関係性が放った、豊かさと素晴らしさを知る機会となった。

この記事を書いたライター

今月のプレゼント