愛らしく、不敵に。「シャドーで光る」ー山本桜大
愛らしく、不敵に。「シャドーで光る」ー山本桜大
プレーを褒めれば…「ガチっすか?」ー。
お世辞や冗談を向けても…「ガチっすか?」ー。
そんな少年だった選手も21歳。プロのサッカー選手として「ガチの世界」で名を上げている。
活躍の様子を見れば、とにかくニコニコしている。しかし、たまに見せる冷たい無表情も、どこか不敵でまた良い。
サッカーが大好きで、プレーをする喜びからあふれ出す笑顔とプロサッカー選手として、大好きなサッカーと向き合っている瞬間の表情、そのコントラストといったところか。柏レイソルからJ2・RB大宮アルディージャへ育成型期限付き移籍中の山本桜大が面白い。

育成年代からそのポテンシャルについては知っていた。ハードワークをいとわないアタッカー。最も能力を発揮するのはゴール前。ゴールを決めるとめちゃめちゃ笑う。
「あれね、つい笑っちゃうんですよね」と言いながらまた笑う山本だが、ただずっと笑っているわけではない。
山本は新天地の大宮で重要な役割を任されている。
基本ポジションは「シャドー」といって差し支えないだろう。ボールの位置や試合状況に応じてMFとしてもFWとしても振る舞うことが求められる難しいポジション。
個人的に私は「シャドーMF」と「シャドーFW」の2タイプが存在する前提で、サッカーを見ているのだが、昔からの印象やゴールを量産している結果などで鑑みるのであれば、どちらかというと、山本は「シャドーFW」として機能をしている予測をしていたのだが、どうやらそれは外れていたようだ。山本のプレーは「シャドーMF」のそれだった。

「今はうまくいっていますけど、まだミスもあって、もっと完璧な仕事をしたいし、望まれています。そのクオリティーをいくつかのポジションで求められているんで、自分としてもこだわっているんです。体力やスプリントに関することには自信があるので、守備での貢献や切り替えから攻撃へ出ていくところ。そういった部分がチームに1番フィットできていると思います」
レイソル時代の山本は彼曰く「ミスが怖くて、良い形でボールを欲しがっていた選手。ボールを失って取り返しにいく選手」だったと言うが、2年が経った今では中盤でもゴール前の重要な瞬間でもボールが集まる選手に。
「今は『桜大はある程度自由に』と言ってもらえていて、実際に昔よりもボールに関与する場面が増えていますし、ヘンな気を遣わずプレーできていると思います」
かつて、サイドを走りまくっていた山本が、相手のMFとDFの『間』へとスッと顔を出して引き出したボールを引き受けて、小気味良いショートパスなり、ダイナミックなチェンジサイドなりでリズムを変え、ゴールへのリアリティを作り出してから、ゴール前へ現れる。「ある程度の自由」を与えられているとはいえ、山本が担う攻撃的なタスクは多い。

もしも、相手にボールを奪われれば、その瞬間から守備が始まる。たとえそのクラブがどんな指向にあろうともこれは「サッカー」という競技が行き着いた「掟」の1つ。ボールを触る分だけ、その回数や瞬間にリスクが増えていく。ゴールや勝利とはまた別にそのあたりのクオリティを競い合うフェーズにあるモダンサッカーにおいて、求められるのは予め備えていて当然の技術レベルを支えるためのフィジカルアップとコレクティブな解決だ。
「チームの中にあるキーワードとしては『ハイ・インテンシティ(高強度)』と『ゲーゲンプレス(即時奪還・即時攻撃)』。イメージとしてはブンデスリーガ的な戦い方に理想があるのだと思います。フィジカル的にはキツいんですけどね、自分1人がどう、誰かがどうって頑張りだけで、このサッカーを表現するのは厳しいものがある。『チーム全体で噛み合って初めてその良さが出るサッカー』なので、全体がしっかりと噛み合ってくると、良い試合ができるんです」
また、「ボールへの執着心」や「戦術的忠誠心」は山本の取り扱い説明書の中でもそれなりのページ数を持って解説されるスペックの1つ。「自分1人がどう、誰かがどうって頑張りだけで」という物事の捉えた方を含めて、「即時奪還・即時攻撃」との相性は抜群である。

そして、何よりもそんなタスクを担いながらの10ゴール達成という価値は特別なものがある。
「本能系」に「パワー系」、「どカウンター系」など、ここまで10パターンあったと言っていいゴールの形。その中でも10ゴール目となった岐阜戦でのゴールは、他のゴールたちよりも「執念系」のゴールだったところはどこか微笑ましかったが、プレーするレーンを以前よりもだいぶ内側に移して、インサイドMFとして振る舞ってから、ストライカーとしてゴールネットを揺らしていること。さらに言えば、彼はまだ大宮に来て、まだ半年にも経たない選手であることは忘れてはならない。
山本はつい数日前と言っていい時期に「10ゴールはしたいですね、『9』と『10』でかなり違いますからね」と話していた。まだ当時は8か9ゴールの時点。そこからの「10ゴール達成」という歩みに興味があった。長かった?それとも?それから、その「シャドー」の居心地はどう?「シャドー(影)」ってくらいだから、過ごしやすい?「シャドー」なのに、光って見えるけど?
「達成できてよかったです。10ゴール目がああいった形でしたけどね、どんな形でもゴールはゴールだし、2シーズン続けての2桁ゴールは自信にしていいと思う。『シャドー』のポジションでの結果であることも大きな意味があります。シャドー?居心地は良いし、気に入っているんです。このポジションをずっとやっていきたいなって思います。試合によっては良いボールが来る来ないはあるんですが、あのポジションである以上、『チームを勝たせる癖』というか、どんな形でもチームに貢献して、勝利に繋げることを自分に求めていきたい」
栃木と山口、そして、大宮ー。
3度目の育成型期限付き移籍の機会を見事に活かす山本。1人の選手として価値を上げている。口にする自身の中にあるメンタリティもよりリアリティがあるものに。

3度目の育成型期限付き移籍の機会を見事に活かす山本。1人の選手として価値を上げている。口にする自身の中にあるメンタリティもよりリアリティがあるものに。
「今までいろんな人たちと関わってきて、いろんな性格の選手や生き方をしている選手と過ごしてきて、自分なりに思う…自分に合うなと思うのは…オンもオフも大切ですけど、できれば、『サッカーが中心にあること』が大切で。『サッカー』へ自分のベクトルを向けながら、矢印の先を『自分』や『サッカー』にしっかりと向けながら継続をしていくことが大事だとすごく思うんです。この先の自分、どうなっていくんでしょうね?今はまだシーズン中ですし、自分がこのチームですべきことははっきりとしているんで、チームに貢献をしたいという気持ち。でも、個人的には『ブンデスリーガでプレーする』という夢があります。それがいつになるのかなんて自分には分かりませんけど、絶対に叶えたい。だから、RB大宮でも結果にこだわっていく必要はあると思います」
最後に話をした際、少し足をかばっていたのが少々気掛かりではあったが、「シャドー」と「10ゴール」という光り輝く結果を携え充実のハーフシーズンを終えたその先に山本が捉える世界はどのようなものだろうか。

どちらにせよ、大好きなものを人生の中心に据えて、笑っていればいいことがあるさ。要するに!「シャドーで光る」山本桜大はガチでいいぞ。
この記事を書いたライター
